ちりも積もればロマンス

2012/04/26 東映第2試写室
見栄っ張りビンボー男と貯金マニアのドケチ女が出会う。
韓国製スクリューボール・コメディ。by K. Hattori

Chiritsumoroman  学校を卒業した後、就職できないままずるずると親のすねをかじり続けるジウン。家賃の払えないアパートを追い出され、行く当てもなく困り果てていた彼に救いの手を差し伸べたのは、隣のアパートに住むホンシルという女性だった。彼女はジウンが2ヶ月間何でも言うことを聞くことを条件に、アパートのベランダにテント暮らしすることを許し、しかも金儲けと貯金の手助けをすると提案する。八方ふさがりのジウンに、ホンシルの提案を断る道はない。彼女に言われるまま、金儲けと極端な節約の日々をはじめるジウン。だがジウンには見栄っ張りなところがあり、少し金が貯まると「就職した」と嘘をついて、好きな女の子にご馳走したりプレゼントを買ったりしはじめる。一方ホンシルも、親切を装ってジウンを自分の金儲けに利用しているのだった……。

 気が強くて男にズケズケものを言う行動力あふれるヒロインと、彼女に翻弄される主人公がやがて恋に落ちるというラブコメディ。劇中で主人公たちが詐欺まがいのセコい商売に精を出す様子や、極端な節約術のあれこれには驚いてしまう。こういうエキセントリックな行動がある種の笑いを生み出していることもあり、これは古典的なスクリューボール・コメディの要素を持った作品でもあると思う。

 ただしこの映画、スクリューボール・コメディとしてはいささかテンポが悪い。脚本にあちこちギクシャクしたところがあって、導入部の滑り出しも悪いし、映画中盤までの転がりもスムーズに行っているとは思えない。登場人物の設定、後半に至る伏線の処理ももたついている。上出来の映画が3分で処理することに、5分ぐらい時間をかけているような感じで、いちいちワンテンポずつ遅れてくるのだ。こうした映画はスピード感が命で、始まった映画があれよあれよと思う間にとんでもない場所まで突っ走って行かなければならないのに、この映画はやけにノンビリしている。脚本をもう少し整理して、この物語を1時間半ちょっとぐらいのコンパクトなサイズにまとめられればよかったのだが。

 映画としてのデキはさほどでもないが、ホンシル役のハン・イェスル、ジウンを演じたソン・ジュンギはなかなか良い。このふたりの芝居に勢いがあって、それが映画のテンポの悪さをある程度はカバーしていると思う。特にソン・ジュンギは金がないのに卑屈にならず、ホンシルに振り回されながらもそれを楽しんでいる風に見える、楽天家のジウンを好演している。普通に考えればこの役はかなり悲惨でろくでもないものなのだが、それが面白く観られてしまうのは本人のキャラクターゆえだろうか。

 本作では主人公のジウンが28歳で、ヒロインのホンシルが29歳という設定。それでいてこのふたりには定職らしいものがなく、結婚もしていないというわけだから、韓国社会も順調に高齢化、晩婚化しているなあ……という印象だ。

(英題:Penny Pinchers)

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5月12日公開予定 新宿武蔵野館
配給:CJ Entertainment Japan
2011年|1時間54分|韓国|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
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