ビッグ・ボーイズ

しあわせの鳥を探して

2012/05/28 シネマート六本木(スクリーン3)
世界最大の探鳥コンテストに参加した3人の男たち。
実話をもとにしたコメディ映画。by K. Hattori

Bigyear  マーク・オブマシックのノンフィクション「ザ・ビッグイヤー/世界最大のバードウォッチング協議会に挑む男と鳥の狂詩曲(ラプソディー)」を原作に、アメリカ最大の探鳥コンテスト「ビッグイヤー」に挑む3人の男たちの戦いを描いたコメディ映画。ビッグイヤーは1年の間に北米大陸とその近海で何種類の野鳥を見つけたかを競うもので、いつでも誰でも「今年はチャレンジする!」と決めさえすれば参加できる。鳥を見つけた証拠は必要なく、探鳥家のプライドを賭けた自己申告のみ。結果は毎年探鳥愛好家の専門誌に発表されるだけで、賞金が出るなどの特典はない。得られるのは名誉だけだが、それだけにマニアはそれに熱中する。アメリカで通常見られる野鳥は600数十種だが、ビッグイヤーの上位入賞者は700種を越える鳥を探し出す。異常気象など何らかの事情で、本来はアメリカにいないはずの鳥が迷い込んでくるのを見つけるのだ。ビッグイヤー参加者は休暇を取って1年間を探鳥のためだけに確保し、仕事も家族もそっちのけでひたすら探鳥に明け暮れる。時間とお金と体力を費やすビッグイヤーは、探鳥家にとって一生に一度の大イベントなのだ。

 映画は原作から多くのエピソードを拾いながら、登場人物やストーリーについてはオリジナルなものになっている。映画の中でビッグイヤーに参加する男たちは3人。原子力技術者として会社勤めをしながら、休暇を使ってビッグイヤーに挑もうとするブラッド(ジャック・ブラック)。世界記録保持者でありながら、再びビッグイヤーでの記録更新を狙う建設業者のケニー(オーウェン・ウィルソン)。大企業の経営責任者という地位をなげうって、若い頃からの夢であるビッグイヤーに挑戦することを決めるスチュ(スティーヴ・マーティン)。映画は彼ら3人の探鳥に賭ける情熱をドタバタ風に描写しながら、同時に彼ら3人と家族の関わりを対照的に描き出して行く。

 探鳥コンテストというマニアックな世界をモチーフにしているが、この映画は三者三様のビッグイヤー挑戦を通して、それぞれの「家族」を描いている。僕自身は探鳥にまったく興味がないし、この映画を観ても探鳥を始めてみようとはまったく思わないのだが、それでも映画を面白く観られるのは、この映画が描く家族の姿に共感するからだろう。探鳥の世界はまるでわからないが、ここに描かれる人間ドラマには普遍性がある。孫が生まれてからビッグイヤーに対する情熱がそがれてしまうスチュの気持ちも、親との関係にうっとうしさを感じつつ、その親からの援助を甘んじて受けているブラッドの気持ちも、家庭を大切にしようと考えながらもズルズルとビッグイヤーにのめり込んでいって引き返せなくなるケニーの気持ちもわかるのだ。僕は趣味の延長で仕事をしている身分なので、金にならないことに血道を上げる探鳥家たちの姿に、つい自分自身を見てしまう面もある。

(原題:The Big Year)

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6月30日公開予定 シネマート新宿
7月公開予定 シネマート心斎橋
配給:エスピーオー映画事業部
2010年|1時間40分|アメリカ|カラー|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://video.foxjapan.com/shiawasenotori/.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して
輸入DVD:The Big Year
原作:ザ・ビッグイヤー 世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲
原作洋書:The Big Year (Mark Obmascik)
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