私の少女時代

2012/07/31 シネマート六本木試写室(スクリーン3)
文化大革命で農村に送られた少女が無医村の医師になる。
中国版「三丁目の夕日」みたいなものか。by K. Hattori

Cmf2012  中国障害者連合会の会長チャン・ハイディーの自伝小説「車椅子の上の夢」を原作者自らが脚色し、中国中央電視台(CCTV)北京科学教育映画撮影所監督のチャオ・ホイリーが監督した青春ドラマ。原作・脚本と監督が女性ということで、昨年のあいち国際女性映画祭でも出品上映されている作品だ。映画の冒頭とラストに現代の中国の風景が描かれ、それと過去が対比されることで、貧しくとも人間同士の温かい交流があり、苦労しながら若者たちが未来を夢見ていた過去の中国を懐かしむような作りになっている。時代も場所も状況も違うが、ここには『ALWAYS 三丁目の夕日』にある昭和30年代ノスタルジーに一脈通じ合うものがあるのかもしれない。文革時代のネガティブな部分には目をつぶり、むしろそこにあった明るさに目を向けているわけだ。ただしそうしたポジティブな過去が、現代にどう結びついているのかが曖昧なので、この映画の文革時代はおとぎ話のように現実から遊離してしまっているのだが……。

 1960年代の中国のとある町。5歳のとき病気で下半身不随になったファンタンは、もう10年も自宅のベッドの上で寝たり起きたりの生活だ。彼女にとって心の慰めは、窓の下の路上でいつもアコーディオンを奏でる青年の存在。ある日ちょっとした偶然から、ファンタンはその青年リージェンと親しくなる。ふたりは一生の親友でいようと誓い合うが、文革の下放政策によってそれぞれ別の農村地帯に送られてしまった。それでも互いに手紙を送り励まし合うふたり。ファンタンは農村で地元の子供たちと親しくなり、やがて子供たちの先生として学校で教えるようになる。独学で医学書を読み、医者のいない村人たちの役にたちたいと願うファンタンのもとに、やがて少しずつ患者となる村人たちがやって来るようになった。

 原作者のチャン・ハイディーは中国では有名人だそうで、この映画の冒頭とラストに登場するのはチャン・ハイディー本人だ。おそらくこの映画は、観ている人が彼女を知っていることが前提になっているのだろう。でなければ、この映画の構成はまったく理解に苦しんでしまう。映画冒頭で車を運転する中年女性が、自らの少女時代を回想するという導入部はわかる。しかし映画に登場する下半身麻痺のヒロインが、なぜ現代の中国で車を運転しているのかがわからない。彼女は夢をかなえて本物の医者になれたのだろうか? 恋人のリージェンとの関係はどうなったのだろうか? 下放が終わって町に戻った後、彼女の生活はどうなったのだろうか? 要するに、現在から過去への回想は上手く処理できても、過去から現在に戻ってくる際の処理が上手く行っていないのだ。

 回想シーンにはつながりの悪いところが多いし、ヒロインの心象風景が突然バレエシーンで挿入されたり、彼女が突然自らの気持ちを歌い出したりする演出もユニークすぎる。

(原題:我的少女時代 My Girlhoot)

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10月6日〜11月16日 新宿K's cinema
「中国映画の全貌 2012」オープニングロードショー
配給:オリオフィルムズ 宣伝:グアパ・グアポ
2011年|1時間42分|中国|カラー|ヴィスタ(1:1.85)
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