神弓

KAMIYUMI

2012/07/31 ショウゲート
敵軍に捕らえられた家族を救出するため弓の名手が大軍に挑む。
弓同士の戦いは見せ場満載で面白い。by K. Hattori

Kamiyumi  17世紀。中国の新たな覇者となった清の皇帝ホンタイジは、周辺国に臣従を要求して多くの国々がこれに従った。だがひとり朝鮮だけがこれを拒否したことから、両国関係は悪化する。西暦1636年、ホンタイジは10万の軍勢を率いて朝鮮を攻め、朝鮮は抵抗も虚しく屈辱的な和議を結ばざるをえなかった。これを「丙子の乱」と呼ぶ。この際、50万人もの朝鮮人が捕虜として連れ去られ、その多くは故郷に戻ることができなかったという。『神弓 KAMIYUMI』はそんな歴史を背景にした、アクション・エンタテインメント作品だ。

 ナミとジャインの兄妹には身寄りがない。愛国者だったふたりの父は、国政を批判して王に疎まれ殺されたのだ。兄妹は父の親友だったキムに育てられるが、ナミは「反逆者の子供に出世の道などない」と自分の人生に見切りを付けている。立派な青年に成長したナミは、父の遺品である弓を握って野山を駆け巡っては獣を追い、酒を飲んで酔いつぶれる日々を送っている。だが美しい娘に成長した妹のジャインは、キムの息子ソグンと愛し合う仲になっていた。ジャインとソグンの結婚式が行われた日、ナミはそっと屋敷から姿を消す。厄介者の自分が近くにいたのでは、キムの一家やそこに嫁いだ妹にとっても迷惑だと考えたからだ。だが町を出て旅への一歩を踏み出したナミの背後で、軍馬のいななきと兵士たちの叫び声、そして大勢の人の悲鳴が聞こえる。国境を越えて、清の軍隊が朝鮮に攻め込んできたのだ。大勢の人々が殺され、それ以上の人々が捕虜として連れ去られた。その中には、ナミやソグンもいる。ナミは愛する人を助け出すため、たったひとりで清の軍隊を追うのだった。

 史実を背景にしているものの、物語自体はまったくのフィクションだ。敵に捕らえられた捕虜を救出するため、主人公が単独で敵陣に乗り込んで行くという話は、映画の世界でこれまで山のように作られている。この映画もそうした「捕虜救出もの」のひとつだが、救出に向かうのが何者の支援も受けない完全な個人で、持っている武器が弓だけというのがユニーク。演じているのはパク・ヘイルだが、彼はアクションヒーロー役が初めてだという。それはそうだろう。見た目がまったくアクションヒーローに見えないのだ。しかしその普通の男が、たまたま大事件に遭遇して、愛する人を守るために必死に戦うところが観客の共感を得るのだろう。これは『ダイ・ハード』と同じだ。ごく普通の男がたまたまハイテクビルでテロ事件に巻き込まれ、妻を守るために孤独な戦いを繰り広げるのが『ダイ・ハード』の基本的なアイデアだった。『神弓 KAMIYUMI』は「捕虜救出もの」に『ダイ・ハード』のアイデアを加え、丙子の乱を時代背景にして、主人公に銃の代わりに弓を持たせた映画なのだ。長い移動で状況が次々に変わる本作には、場所限定の『ダイ・ハード』とは違う面白さがある。

(英題:Arrow, the Ultimate Weapon)

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8月25日公開予定 シネマート新宿、シネマート六本木、ヒューマントラストシネマ有楽町
配給:ショウゲート 宣伝:ブラウニー
2011年|2時間2分|韓国|カラー|スコープサイズ|SRD
関連ホームページ:http://kamiyumi.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
韓国版Blu-ray+DVD:最終兵器弓
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