るろうに剣心

2012/08/02 WB試写室
アニメにもなっている人気コミックを豪華キャストで実写映画化。
悪役を演じる吉川晃司がじつに良かった。by K. Hattori

Rurouni  週刊少年ジャンプに1994年から1999年にかけて連載され、テレビアニメや劇場版、OVAなどで映像化された人気コミックの実写版。人気コミックの実写化には常に賛否両論が付いて回るものだろうが、原作やアニメ版をちゃんと見ていたわけでもない僕としては、この実写版剣心はOKだ。この映画は1本の映画作品としてきちんと破綻なくまとまっているし、時代劇映画としてのリアリティもある。時代劇で明治ものはあまり数が多くないのだが、時代背景としては「幕末もの」の少しあとの時代。日本が西欧型の近代社会になり人々が洋装で出歩くようになった時代でありながら、普段着としては着物であり、女性はみんな日本髪を結っていた時代だ。日本が開国と攘夷、勤王と佐幕に二分された戦争の時代から10年が過ぎ、人々が新しい時代の先を見て歩む一方、暗い戦争時代の影を引きずって生きる人たちも多かった時代だ。

 映画の導入部は戊辰戦争の端緒となった鳥羽伏見の戦いから始まる。戦いの中で血刀を振るう倒幕側の剣士・緋村抜刀斎と、彼との戦いを望む新選組最強の男・斎藤一。だがこの戦いを最後に、幕末最強の剣士であり「人斬り抜刀斎」の異名で恐れられた緋村は姿を消した。それから10年後の明治11年。かつての抜刀斎は緋村剣心と名を改めて、ふらりと東京に現れる。その頃東京では、抜刀斎を名乗る剣士による連続殺人事件が起きていた。ひょんなことから神谷活心流の師範代・神谷薫と知り合った剣心は、阿片売買で自らの帝国を築こうとする悪徳商人・武田観柳の陰謀に巻き込まれていく。彼の用心棒のように働いているのが、本物の抜刀斎との戦うため偽抜刀斎として人斬りを繰り返す鵜藤刃衛であった……。

 漫画に登場する荒唐無稽なキャラクターたちを、いかにして現実の人間に演じさせるのかというのが実写映画化のひとつのテーマだと思うが、この映画ではそれを難なくクリアしている。もともと時代劇の世界にはヒーローにも悪役にも荒唐無稽なキャラクターが多く、長年に渡ってそれを受け止めてきた土壌がある。ギンギラ衣装の旗本退屈男も、覆面のヒーロー鞍馬天狗も、投げ銭で犯人を捕らえる銭形平次も、リアリズムを追究すれば成り立たないヒーローたちだ。それが見せ方ひとつで、映画的なリアリティの中にきちんと収まってしまう。それが時代劇の面白さ。今回の『るろうに剣心』は、そういう意味で久しぶりに時代劇らしい時代劇になっていたと思う。

 監督の大友啓史はNHK大河「龍馬伝」の演出家で、映画は『ハゲタカ』に続く2作目。主演の佐藤健は「龍馬伝」で岡田以蔵(人斬り以蔵)を演じていて、今回のキャスティングはその延長にあるものなのだろう。今回は吉川晃司演じる鵜堂刃衛との対決がクライマックス。ガタイのいい吉川晃司の悪役は、カリスマ性があって素晴らしい仕上がり。原作はまだまだある。続編にも期待したい。

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8月25日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝:る・ひまわり、T-BASIC
2012年|2時間14分|日本|カラー|サイズ|サウンド
関連ホームページ:http://www.rurouni-kenshin.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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