JAPAN IN A DAY

[ジャパン イン ア デイ]

2012/10/05 シネマート六本木(スクリーン4)
世界中の投稿動画で構成された『LIFE IN A DAY』の日本版。
大震災から1年後の2012年3月11日を描く。by K. Hattori

Japaninaday  リドリー・スコットとトニー・スコットの製作会社スコットフリーが製作した、『LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語』に続く投稿動画ドキュメンタリーの日本版。フジテレビとスコットフリー共同製作という日英合作映画だ。製作総指揮はリドリー・スコットと、『踊る大捜査線』シリーズの亀山千広。2011年3月の東日本大震災からちょうど1年後の2012年3月11日をテーマに、日本各地で営まれる普通の人たちの暮らしと、そこに影を落とす震災と原発事故の爪痕を描いていく。

 膨大な数の投稿動画をベースにした作品なので、これといった物語があるわけではない。2012年3月11日に日付が変わった真夜中から映画がスタートし、2012年3月12日に日付が変わったところで映画が終わる。映画はこの24時間と少しの時間を、時系列にずっと追いかけていくのだ。映画を観ていると、あちこちに何度も出てくる人物もいれば、ほんの一瞬の登場で強い印象を残す人たちもいる。画質や音質もまちまちだし、画面サイズもばらばら。こうした雑多な素材をまとめる編集作業には、膨大な手間がかかったと思う。監督のフィリップ・マーティンと成田岳、編集のクリスティーナ・ヘザーリントンと松尾浩の苦労を想像するだけで頭がクラクラしてくる。完成した映像に寄り添うように流れる、ニティン・ソーニーの音楽も素晴らしい。映画を企画した人、映像素材を提供した、提供された素材と向き合って編集した人、その他もろもろの力が結集して、この映画を作り出している。

 だがこの映画を観た人は、この映画に写っていない人たちこそがこの作品の本当の主人公だとすぐ気づくと思う。それは3月11日の震災で亡くなった多くの人たちだ。この映画はそのことについて、大きな声で何かを語るわけではない。しかし伝わってくるのは、日本という国が抱えた大きな喪失感だ。今ここにある普通の暮らしは、2011年3月11日を境にして大きく変えられてしまい、それ以前の暮らしは二度と戻ってこない。その痛みを抱えながらも、時間は未来に向かって真っ直ぐに進んで決して後戻りしない。過去の記憶に後ろ髪を引かれながら、それでも人は今、今日この時を生きなければならない。震災や原発事故でそれまでの生活が根こそぎ奪われても、人は生きているかぎり今を生きて行く。そこには悲しいことも、寂しいことも、嬉しいことも、楽しいこともあるだろう。決して忘れることのできない特別な1日を、人はごく平凡に生きる。その平凡さが持つ力強さに、映画を観ながらつい感動してしまうのだ。

 『LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語』はシリーズの続編として『Britain in a Day』が製作されていて、本作『JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]』はシリーズ第3弾になる。

(原題:Japan in a Day)

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11月3日公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか
配給:ギャガ
2012年|1時間32分|イギリス、日本|カラー
関連ホームページ:http://japan-in-a-day.gaga.ne.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語
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