同じ星の下、それぞれの夜

2012/11/28 シネマート六本木(スクリーン3)
タイ、フィリピン、マレーシアを舞台にした3話オムニバス。
タイトルの意味は映画を観ればわかる。by K. Hattori

Onajishoshi  タイ、フィリピン、マレーシア。アジア諸国を舞台にした、3話オムニバス映画。それぞれの土地や現地の人々と関わりを持った日本人を主人公に、現地ロケの風景をたっぷり盛り込みながら、観光旅行とは一味もふた味も違うアジアの空気を味わわせてくれる。上映時間1時間50分だから、1エピソードあたりの尺は35分ほど。これだけあると、結構いろんなことができてしまうのだ。以下、各エピソードのあらすじと感想。

 第1話「チェンライの娘」は、タイを訪れた貧乏役者が現地の若い女の子から金持ちのスター俳優だと誤解され、チェンライまで引っ張り回された挙げ句に身ぐるみはがれそうになる話。ところが身ぐるみはごうにも、男が貧乏だからそれ以上はぎようがない。女の子たちは男を見捨てて逃げようとするが、馬鹿に陽気で屈託がない男の様子を見て、捨てるに捨てられなくなってしまう。監督は『国道20号線』や『サウダーヂ』の富田克也。主演は川瀬陽太。タイ人の女の子を演じたAiとスシットラボン・ヌッチリは、『サウダーヂ』にも出演していたとのこと。主人公の男が中年になってから異国で夢のような日々を送るという話で、僕は年齢が近いこともあって主人公を応援してしまった。

 第2話「ニュースラウンジ25時」は、ムーディ勝山が深夜ニュース番組のキャスターに扮した恋愛ドラマ。監督は冨永昌敬。主人公の男はフィリピン駐在員をしている同僚女性と恋人同士だが、自分は東京、彼女はマニラで、もう長い間直接会うこともない。ところが彼女から電話で別れ話を切り出され、フィリピン支局の閉鎖と同時に彼女が退職すると聞いて、慌てて彼女のもとに飛んでいくのだが……という話。主人公がフィリピンと日本を何度も日帰りで往復するというのが、この映画のアイデアだろう。フィリピンは遠い国のようだが、じつは意外に近いらしい。とは言え片道5時間だから、主人公はマニラに着いたと思うとすぐとんぼ返り。これがドタバタの面白さを生み出している。

 第3話「FUN FAIR」は、幼い少女が仕事に出た母親を訪ねるため、子ヤギを引っ張って長い道のりを歩くというロードムービー。アイデアとしては、「はじめてのおつかい」の映画版みたいなものだと思えばいい。今回の3話オムニバスの中で、唯一日本人が主人公ではないエピソードだ。ただし物語の途中から、彼女の危なっかしい旅をフォローするため出張中の日本人サラリーマンが合流する。連れていた子ヤギが逃げ出して、それを自転車タクシーの男とふたりで必死に探し回るのが後半の山場になる。まるで言葉が通じない3人が、気持ちだけで心を通じ合わせていく描写が心地よい。主演は山本剛史。監督は『イエローキッド』『NINIFUNI』の真利子哲也。

 3本のうち万人向けの感動作が3本目の『FUN FAIR』だが、個人的には冒頭『チェンライの娘』の楽天的なムードが好きだ。

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2月9日公開予定 テアトル新宿、シネリーブル池袋
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
2012年|1時間10分|日本|カラー|アメリカンビスタ 1:1.85
関連ホームページ:http://www.onajihoshi.com
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