キャビン

2013/01/16 シネマート六本木(スクリーン3)
山奥の山荘でゾンビに襲われる若者と彼らを監視する男たち。
諸星大二郎の短編を思い出した。by K. Hattori

Cabin  アメリカの某所にあるハイテク装備の秘密施設。世界中にある無数の監視カメラ映像がここに集約され、多数の職員たちが遠隔操作でさまざまな操作をしている。この道何十年のベテラン職員シッターソンとハドリーの今回の任務は、5人の若者を森の中の山荘に誘導することから始まる。やがて若者たちは、森の中から現れたゾンビ一家に襲撃されることになるのだが……。

 人里離れた場所を訪れた若者グループが何者かに襲撃され、ひとりずつ残酷に殺されていくという定番の設定。ところがこれが、ハイテク装備で始終監視されているというヒネリ。ホラー映画の定番設定や恐がらせ方のノウハウは作り手にも観客にも研究されつくされ、『スクリーム』(1996)以降はこうした手法やノウハウについて劇中で語ることさえ行われている。この延長上に、例えば『ファイナル・デスティネーション』シリーズのようなものも存在するのだ。この『キャビン』も若者グループ襲撃という定番の設定を持ち出し、その背後にある襲撃側の意図や目的を探っていくという物語になっている点で、『スクリーム』や『ファイナル・デスティネーション』の流れの中にある作品と言える。ただしこれをシリーズ化するのは難しいかもしれないが……。

 若者たちを操り犠牲者に仕立て上げるグループの意図については、これまでにな斬新さを感じる人も多いと思う。しかし僕はこのアイデアを、ずっと昔に別のところで見たことがある。諸星大二郎の短編漫画「礎(詔命)」だ。この漫画のアイデアをハリウッド流にボリュームアップし、アクション満載のエンタテインメントにすると、本作『キャビン』のような形になるのかもしれない。

 監督は『クローバーフィールド HAKAISHA』の脚本家だったドリュー・ゴダードで、これが彼の映画監督デビュー作。もちろん今回は脚本も書いている。製作と共同脚本は『アベンジャーズ』の監督ジョス・ウェドン。B級ホラー映画のような体裁のくせに、出演者が豪華なことにも驚かされる。映画の開始直後にいきなり出てくるのが、施設職員シッターソン役のリチャード・ジェンキンスと、ハドリー役のブラッドリー・ウィットフォード。施設職員役にはさらなるビッグスターも登場するのだが、これはプレス資料でもあえて名前が伏せられているので、映画を観てのお楽しみ。僕は映画を観ていて、一瞬我が目を疑った程だ。この大スターの登場で試写室内では一瞬だけ戸惑いの沈黙があった後、あちこちでゲラゲラ笑い出す人が続出していた。人間よくわからないものに出くわすと、とりあえず笑ってしまうのだ。

 物語の解きほぐし方として、アメリカの脚本家ならおそらくみんな映画学校で習うのであろうストーリー理論などを持ち出しているのがユニーク。だがこの手の理論を物語の背景に引っ込めず、表に出してくるところは一種の禁じ手だろう。

(原題:The Cabin in the Woods)

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3月9日公開予定 シネマサンシャイン池袋
配給:クロックワークス 宣伝:スキップ、デジタルプラス
2012年|1時間35分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://cabin-movie.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
輸入DVD:The Cabin in the Woods
サントラCD:The Cabin in the Woods
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