ダーク・タイド

2013/02/13 シネマート六本木(スクリーン3)
ハル・ベリーが南アの海でホホジロザメと一緒にダイビング。
まとまりは悪いが映像は迫力あり。by K. Hattori

13021301  サーフィン映画の快作『ブルークラッシュ』のジョン・ストックウェル監督が、南アフリカ沖で行われるシャークダイビングの世界を描く海洋アドベンチャー映画。シャークダイビングはダイバーが檻の中に入ってサメを観察する観光ツアーなどもあるようだが、この映画に登場するのはダイバーが檻から出て、直接サメと一緒に泳ぎ、サメと触れあうというもの。相手は小型でおとなしいサメではない。映画『ジョーズ』にも登場する巨大で凶暴なホホジロザメだ。だがこれはサメの習性を熟知したベテランのダイバーにとっては、海の野生動物と触れあう驚異的な体験であるらしい。映画には実際にダイバーがサメと触れあう場面が何度も出てくるが、体のすぐ脇をスルリとすり抜けていくサメの体にタッチしたり、ヒレをつかんで一緒に泳ぐ体験は、この世界の中でもごくわずかな人間にしかできないものだろう。

 海洋学者のケイトは、南アフリカ沖で大型のサメを研究している海洋生物学者。映像作家である夫のジェフと一緒に、いつかサメについての映画を撮るのが夢だ。だが一緒に潜水していた同僚が目の前でサメに襲われて亡くなるという事故が起きてから、ケイトはサメ目的のダイビングから身を引き、夫のジェフとも別居するようになってしまった。それから1年後、観光客向けのアザラシ観察ツアーで細々と食いつないでいたケイトは、借金がかさんで生活の糧でもある船を銀行に差し押さえられそうになる。そこに現れたのがジェフだ。彼はイギリスの金持ちを、シャークダイビングに連れて行けば大金になると持ちかける。報酬はなんと10万ユーロ。背に腹は替えられず再びサメのいる海に出かけたケイトだったが、そこで再び思いがけない事故に見舞われることになるのだった……。

 主人公のケイトを演じているのは、アカデミー女優のハル・ベリー。夫のジェフを演じるのはオリヴィエ・マルティネス。こうしたスター俳優が、どれだけこの映画に必要だったのかは謎だろう。何しろ映画の主役は海であり、そこに生きているサメたちなのだから。しかしこれらのスター俳優が出演していることで、観客は絶対的な自然に対峙する主人公たちにかろうじて感情移入することができるようになる。ハル・ベリーやオリヴィエ・マルティネスといった人気スターのオーラなしには、海の中を優雅に泳ぎまわるサメの圧倒的な存在感に負けてしまうのだ。

 物語としてはまとまりが悪くて取り散らかった印象が強く、それは映画の終盤でより顕著になる。主人公たちの船がより巨大なサメを探して沖に出て行くあたりから物語が混乱し始め、いったい誰が何のために船をより危険な水域に進めようとしているのかがさっぱりわからなくなってしまうのだ。物語の構成は混乱し、物語の中の出来事も混乱してくる。もっとも構成がへんなのは中盤にもあって、アワビ密漁のエピソードが唐突すぎたりもするのだが……。

(原題:Dark Tide)

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3月16日公開予定 ヒューマントラストシネマ渋谷
配給:ファインフィルムズ
2012年|1時間53分|アメリカ、南アフリカ|カラー|シネスコ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.finefilms.co.jp/darktide/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
輸入DVD:Dark Tide
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