シュガー・ラッシュ

2013/03/24 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン2)
ヒーローになりたい悪役キャラがゲームの世界から脱出。
日本語吹替の3D版を鑑賞。by K. Hattori

13032401  入れ替わりの激しいアーケードゲームの世界で、かれこれ30年も現役として働き続けている人気ゲーム機「フィックス・イット・フェリックス」。大男の暴れん坊ラルフが破壊するマンションの窓を、修理屋のフェリックスが魔法のハンマーで修理して行くという面クリア型のアクションゲームだ。だがゲームセンターの営業時間が終わる頃、ゲームの中では悪役のラルフがため息をつく。自分の仕事はここ30年まったく変わらず悪役ばかり。それが仕事だし、それにどんな不自由があるというわけでもないのだが、同じゲームキャラクターなのに、修理屋のフェリックスとの扱いが違いすぎないだろうか。自分も一度でいいから正義の味方になってみたい。自分の活躍や働きぶりを認められて、みんなに感謝されたい。ゲーム30周年を祝うパーティの夜、他のゲームキャラクターたちに仲間はずれにされたラルフは、ヒーローの証であるメダルを探す旅に出る。目指すは他のゲームの世界だ!

 日本語タイトルは『シュガー・ラッシュ』だが、原題は『Wreck-It Ralph』。これはラルフが仕事をしているレトロゲーム「Fix-It Felix, Jr.」の名前をもじったものだ。つまり映画の主人公は怪力の大男ラルフだということがわかる。しかし日本語タイトルはそれを、ラルフが迷い込む別のゲームの名前「シュガー・ラッシュ」に変更。これだと映画がラルフの物語だとわかりにくくなってしまうが、むしろ逆に子供向けのカワイイ世界だということにして宣伝し、封切りの週末で興行ランキング1位という好成績を上げた。『シュガー・ラッシュ』というタイトルがこの映画にドンピシャリだとは決して思わないが、タイトルをいじることで映画の主人公をラルフから、「シュガー・ラッシュ」に登場する少女レーサーのヴァネロペに変えているのは悪くないと思う。これは大人が観ても楽しい映画だが、まず第一に子供向けの映画なのだ。子供たちは「この道30年のベテランだが最近自分の仕事に疑問を持っている中年のゲームキャラクター」より、誰かに認められたくて一所懸命努力している小さな女の子の方に感情移入しやすいだろう。

 慣れ親しんだ仕事に空しさを感じ、「自分にはもっと別の生き方や可能性があるのではないか?」と自問するラルフの姿に、おそらく多くの大人たちが共感を覚えるのではないだろうか。結局ラルフは悪役稼業から抜け出せないし、30年続けた仕事を変えることもできない。しかしその仕事の「意味」は、大きく違ったものになる。これはヴァネロペが自分自身の持つプログラムの不安定さを、欠点ではなく特技に変えてしまったのも同じことなのだろう。だがそれでも、ラルフの人生はちょっと切ないなぁ……。

 併映作品は今年のアカデミー短編アニメーション賞を受賞した「紙ひこうき」。

(原題:Wreck-It Ralph)

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3月23日公開 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
2012年|1時間48分|アメリカ|カラー|2.35:1|Datasat、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://www.disney.co.jp/sugar-rush/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:シュガー・ラッシュ
サントラCD:Wreck-It Ralph
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