イノセント・ガーデン

2013/04/11 20世紀フォックス試写室
ハンサムな叔父が現れた日から少女の周囲で人が消えていく。
パク・チャヌク監督のハリウッド作品。by K. Hattori

13041102  インディア・ストーカーが18歳を迎えた日、彼女の父は不審な事故死を遂げる。葬儀の日に現れたのは、長く連絡を取っていなかった父の弟チャーリー。そのまま家に居ついたチャーリーは、またたく間にインディアと母エヴィを魅了する。だがチャーリーには何か秘密があるらしい。家で古くから働く家政婦は、チャーリーがやって来るのと入れ替わるように姿を消してしまった。家をたずねてきた大叔母は家族がチャーリーと同居している様子を見てひどく狼狽するが、その晩のうちにやはり姿を消してしまう。家族の周囲で、次々に人が消えていく。やがてインディアは、叔父チャーリーの驚くべき素顔を知る事になるのだった……。

 『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』のパク・チャヌク監督が、ハリウッドに招かれて撮ったサスペンス・スリラー映画。パク監督は慣れない異国での初仕事に、気心の知れた撮影監督チョン・ジョフンを同行させている。主演は『アリス・イン・ワンダーランド』や『ジェーン・エア』のミア・ワシコウスカ。ヒロインの母をニコール・キッドマンが演じ、謎めいた叔父をイギリスの俳優マシュー・グードが演じている。登場場面は少ないが、映画の冒頭で既に亡くなっている父を演じるのはダーモット・マルロニー。これまた登場してすぐ消えてしまう大叔母役で、『アニマル・キングダム』や『世界にひとつのプレイブック』に出演しているオーストラリアの女優ジャッキー・ウィーヴァーが顔を出す。映画のムードも重苦しいのだが、出演者の顔ぶれもかなり豪華なものだ。

 映画の冒頭が「父の死」という不吉なムードで始まり、謎めいた叔父の登場、次々消えていく人々、殺人事件など、かなりダークな世界が展開する。しかしここに、心臓をわしづかみにされるようなサスペンスは感じられない。ヒロインの周囲でどれほど危険な事件が起きていても、ヒロインだけはそうした事件から分厚いガラス板で仕切られているような、彼女だけは絶対安全圏にいるような安心感が感じられてしまうのだ。動物園の猛獣を、分厚いガラス越しに眺めているようなものかもしれない。ガラスの外から中の動物は詳細に見えるが、何らかの危害を加えられる心配はないし、猛獣の匂いも感じられない。ガラスを隔てた向こうとこちらは別世界なのだ。

 動物園の動物については、檻やガラス板は人間を守るためではなく、危険な人間から動物を守るためにあるのだ……というジョークとも本音ともつかぬ話がある。(実際に動物園の動物に危害を加えようとする人間は時々現れてニュースになったりする。)『イノセント・ガーデン』という映画も、じつはこうした逆説についての物語になっている。しかしこの逆説が、観客をあっと驚かせるどんでん返しにはならないのが残念。これはエピソードの組み立てに、少し難があるのかもしれない。

(原題:Stoker)

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5月31日公開予定 TOHOシネマズシャンテ、シネマカリテほか
配給:20世紀フォックス映画 宣伝:樂舎、ティー・ベーシック
2012年|1時間39分|アメリカ|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://www.foxmovies.jp/innocent-garden/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:Stroker
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