パニック・マーケット3D

2013/07/09 松竹試写室
海水が流入したスーパーに飢えたホオジロザメが侵入。
サメはでかいが映画は小粒。by K. Hattori

13070903  ライフセーバーの仕事をしているジョシュは、親友ローリーの妹ティナと婚約して幸せの絶頂。だがそんな矢先、ビーチに侵入したホオジロザメによって、目の前でローリーを食い殺されるという悲劇に見舞われた。それから1年後。親友を助けられなかった自責の念からジョシュはティナと別れてしまい、今は海の仕事を離れてスーパーでアルバイトをしている。そこに別れたティナが新しい恋人とやってきたりしたものだから、ジョシュの気持ちは落ち込むばかり……。だがそのスーパーに、突然津波が襲いかかって店内は水浸し。何とか陳列棚によじ登った生存者たちだが、なんとその周囲を1匹のホオジロザメが泳ぎ回る。海水と一緒に店内に入り込んだのだ。脱出しなければ店内は完全に水没して、自分たちはおぼれ死ぬかサメの餌食になるだけだ。だがどうやって外に出る? 陳列棚の周囲は全部海水で、そこにはホオジロザメが泳いでいるのだ。

 『ハイランダー』シリーズや『レザレクション』『バイオハザードIII』のラッセル・マルケイが製作総指揮と脚本を担当した動物パニック映画。屋内にサメが侵入して人間を食いまくるという話は、レニー・ハーリンの『ディープ・ブルー』や中国映画『超強台風』などの前例があるため、じつはあまり新鮮味がない。過去の悲劇が原因で疎遠になっていた恋人同士が、新しい事件に出会ってよりを戻すという展開も月並み。強盗犯が事件に遭遇して善良な男としての本性を見せるというのも、過去に山ほど作られてきた物語のパターンだろう。要するにこの映画、物語の軸になる部分にはどこにもオリジナリティがないのだ。だが映画はオリジナルであれば面白いとは限らないし、新鮮味のない話だからつまらないとは限らない。

 この映画はあちこちに盛り込まれている小ネタの部分が面白い。地下駐車場で車に閉じ込められてしまったバカップルのエピソードなどは最高だ。ならば全編小ネタに走ってコメディ映画すれすれの線を狙えばいいのだが、この映画はそこまで腹が据わっているわけでもないのが中途半端。サメの悲劇で疎遠になったカップルが、サメの事件に再度遭遇してよりを戻す話なら、ハル・ベリーとオリヴィエ・マルティネスが出演した『ダーク・タイド』の方が面白いだろう。何しろあちらには、本物のホオジロザメと人間が泳ぐシーンが、特撮なしの実写で挿入されているのだ。人間が殺されるシーンの残酷描写も、『ファイナル・デッドコースター』シリーズの方がずっとエグイし、あちらもシリーズ4作目と5作目は3Dだった。スーパーに閉じ込められた少数の生存者の話なら、『ゾンビ』があったし『ミスト』がある。真面目にやればこうした映画に太刀打ちできない映画なのだから、別路線を狙うべきなのだろうが……。

 そういう困った映画ではあるのだが、ホオジロザメの旺盛な食欲だけが記憶に残る。結局何人食べたんだ?

(原題:Bait)

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8月24日公開予定 シネマート新宿
配給:『パニック・マーケット3D』フィルムパートナーズ 協力:松竹
2011年|1時間29分|オーストラリア、シンガポール|カラー|1.85:1|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.panicmarket.com
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
Blu-ray(輸入盤):Bait 3d
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