地球防衛未亡人

2013/12/05 映画美学校試写室
壇蜜が演じるエースパイロットが怪獣相手にエクスタシー。
過剰なアイデアとサービス精神は天晴れ。by K. Hattori

13120501  日中間でその領有権を巡る争いが起きている沖縄の尖閣……じゃなくて三角諸島に、宇宙から飛来した怪獣ベムラスが出現する。ベムラスは本土に移動して原子力発電所を襲撃。地球防衛軍(略称JAP)の女性エースパイロット、ダン隊員は、即座に出撃してベムラスを攻撃する。彼女にとってベムラスは愛する夫を殺した憎いカタキ。だが彼女は攻撃中に謎のエクスタシーによって意識朦朧としてしまうのだった。一方ベムラスは原発の使用済み核燃料(核のゴミ)をむさぼり食い、これが世界各国の注目を浴びる。世界のどこでも厄介者扱いされる使用済み核燃料を怪獣に食べてもらえれば、世界のエネルギー問題は一気に解消する。日米はベムラスを保護することで、この利権を独占しようとするのだが……。

 JAPのダン隊員を演じているのは、グラビアアイドルから最近は女優活動に力を入れている壇蜜。JAPの隊長を「ウルトラセブン」の森次晃嗣が演じ、壇蜜演じるダン隊員に向かって「ダン!」と呼びかけるところではついニヤニヤしてしまう。特撮は往年の円谷テイストだが、担当しているのは「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」シリーズの特撮を担当している特撮研究所だから本格的。JAPの制服はマンガ家の藤原カムイがデザインし、怪獣のデザインはマンガ家でアニメーターの麻宮騎亜。監督は『いかレスラー』や『日本以外全部沈没』『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』の河崎実で、監督が20年以上に渡って製作しているスーパーヒーロー「電エース」も、今回の映画にゲスト出演している。

 この映画は、パロディ、風刺、ギャグ、お色気、特撮、アクション、お涙頂戴、ラブストーリー、ポリティカルサスペンスなど、何でもありのごった煮状態。とは言えそれらが渾然一体となって何らかの料理になっているわけでもなく、雑多なアイデアが次から次に放り込まれてぐるぐる攪拌されているだけのラフな作りだ。しかしこれは詰め込まれているアイデアが半端ではない。矢継ぎ早に次から次にギャグが出たりお色気シーンがあったりという、アイデアの大盤振る舞いなのだ。未整理で乱雑でキッチュではあっても、出し惜しみのないアイデアの物量作戦で観客を押し切ってしまう。低予算映画に特有のチープな香りをプンプン漂わせつつ、それでもお客さんに徹底してサービスしようとする姿勢が観客を酔わせるのだ。お高くとまった銀座高級クラブの美人ホステスより、場末の安いキャバクラで精一杯の歓迎を受けた方が嬉しいとか、たぶんそういう感覚なのではあるまいか。(ちなみに僕はどっちも経験がないので想像で言っているわけだけど……。)

 全編にわたって観客を楽しませよう、そして自分たちも楽しんでしまおうという「楽しさ」の塊のような作品。ほぼ満席の試写室は打てば響くような反応の良さで、小劇団の上演を観ているようなライブ感があった。

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2014年2月8日(土)公開予定 角川シネマ新宿ほか
配給・宣伝:トラヴィス
2014年|1時間24分|日本|カラー|デジタル
関連ホームページ:http://cbm-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:壇蜜 in“地球防衛未亡人” メイキング
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