許されざる者

1993/04/23
西部劇育ちのイーストウッドが西部劇の歴史に終止符を打った。
アカデミー賞受賞も納得の人間ドラマ。by K. Hattori



 イーストウッドはこの1作で西部劇にとどめを刺した。彼の新作『許されざる者』は、西部劇におなじみの痛快な銃撃戦ではタブーになっていた「引き金の重さ」をテーマにした作品だ。このテーマは劇中で形を変え、何度も執拗に繰り返される。

 拳銃の引き金を引けば弾丸が発射され、運悪くその前に立っていた人間は死ぬ。こんな当たり前のことに、僕たちは実は気がついていなかったのかも知れない。イーストウッド演ずるマニーを賞金稼ぎに誘うキッド同様に、僕たちも銃を撃てば人が死ぬということを何となくわかった気になっていた。

 この映画で僕たちは、銃口の向こう側にいる人間にも、こちら側にあるのと同じ「命」があることを知ってしまった。イーストウッドは自身がガンマンとして主演するこの映画で、ガンマンそのものを否定してしまったのだ。この映画の後、果たしてかつてのような痛快な西部劇が作れるものだろうか。この映画の後、いわゆる西部劇を撮ろうとするプロデューサーが現われるものだろうか。いたとしたらそれは、相当度胸があるか、あるいは無謀かだろう。

 文句なし。アカデミー最優秀作品賞の名に恥じない傑作である。



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