沈黙の要塞

1994/05/31 丸の内ルーブル
スティーブン・セガール主演の環境保護アクション映画。
脚本をもう少し整理してほしかった。by K. Hattori



 傑作『沈黙の戦艦』でスティーブン・セガールの魅力の虜になった僕ですから、嘘とわかっていても『沈黙シリーズ第2弾!』なんて言われれば映画館に足を運んでしまいます。『沈黙の戦艦』は良かったなぁ。共演した女の子もキュートでねぇ、相手役のトミー・リー・ジョーンズも不敵な面構えで憎々しげな悪役を演じきっていたし、そこここにユーモアがあったしね。ゲリ・ビジーの女装という悪夢のような芸も観られたしなぁ。クライマックスの夜間戦闘シーンで、うんうん言いながらミズリー号の主砲が発射されると真っ暗な水平線にドドーンと火柱が立ってね、「おおおおお……これはすごい」と思いますよ、誰だって。これはビデオで見たってその魅力が3分の1もわからないでしょうなぁ。僕の友人はビデオで見た感想として「まあまあ面白い」と言っていましたが、これは劇場で観ると面白さが5倍は濃厚なんだなぁ。ビデオで観る『沈黙の戦艦』は、水で5倍に薄めた日本酒のようなものです。劇場の味わいを知っている者にとっては、観るに値しない映画なのだなぁ。で、『沈黙の要塞』ですが……。

 『沈黙の戦艦』のトミー・リー・ジョーンズは格闘技の達人で、クライマックスシーンでは主人公セガールとなかば互角の格闘を演じていました。ですから今回『沈黙の要塞』の悪役にマイケル・ケインが配置されたとき、この人もきっと空手の達人で、最後はセガール相手にくんずほぐれつの大格闘シーンが用意されているものとばかり思っていました。きっと撮影はしたのでしょう。でも時間の都合でカットされたんだな、きっと。

 セガールの相手役、ジョアン・チェンはいったい何のために登場したんだかわからない。『沈黙の戦艦』に登場した金髪ボインの彼女はそれなりに活躍してたんだから、今回の『沈黙の要塞』でもジョアン・チェンは大活躍していたはず。センスのない編集者が勝手に切ってしまったのだろうね、きっと。

 エスキモー部落に保護されたセガールが、部落の首長に指導されてさまざまな幻を見ます。老いた首長は悪い奴にピストルで撃たれて死にますが、臨終の床でセガールに魔術の奥義を授けます。このエスキモーの魔術は後の戦闘でセガールが絶体絶命のピンチに陥ったとき彼を助けるのですが、残念ながら今回の映画ではそのシーンがカットされています。

 今回の映画はテーマが環境保護。監督はセガール自身。最後の大演説は立派ですが、そこに至る伏線が全て編集でカットされているため、このシーンはいささか唐突に見えてしまいます。彼が作りたかった映画はあと1,2時間ほど長かったのですが、娯楽映画としての制約からそれを会社の編集マンがずたずたに切り裂いてしまったのですね、たぶん。残ったのはおなじみのアクションシーンのみ。セガールとしては悔いの残る監督デビュー作でしょう。

 僕としてはセガールのアクションが観られればそれで満足。それで満足できない人は、観ない方がいいかもしれません。

 (なお、文中にある製作裏話はすべて僕の想像と妄想の産物です。)


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