ライオン・キング

1994/09/23
手塚治虫の「ジャングル大帝」から盗作したのではと騒がれたディズニー映画。
歌と物語がちぐはぐでエピソードもかけ足過ぎる。by K. Hattoriby K. Hattori


 僕は『リトル・マーメイド』以来、最近のディズニーアニメのひいきとなりました。この映画では主人公のアリエルが"PART OF YOUR WORLD"を歌い始めたあたりで不覚にも涙が出たものです。ブロードウェイで活躍していたアラン・メンケンとハワード・アシュマンを、ディズニーが招いて作詞作曲を担当させた作品でした。このコンビは後に『美女と野獣』で完璧なミュージカルを作ってくれます。この映画はオープニングから村人全員の大コーラスというサービスぶり。嬉しくて幸せで、僕は映画が始まったとたんにまたしても泣いてしまいました。その後は食器たちがバズビー・バークレー映画ばりに歌い踊るナンバーで狂喜し、アンジェラ・ラズベリーの歌にあわせて主人公たちが踊るシーンでは、あまりの美しさに涙が止まらなかった。CGを使ったアニメーションも素晴らしかったけど、やはりテーマ曲がいい。この後ハワード・アシュマンが亡くなり、『アラジン』で作詞をバトンタッチしたのがティム・ライス。主人公二人が魔法のカーペットで世界を旅するシーンに流れるテーマ曲の"A WHOLE NEW WORLD"はうっとりするような名曲で、カーペットが水面に波紋を描きながら飛行する演出には、またまた泣かされました。

 新作『ライオン・キング』を遅ればせながら今日観てきました。作詞のティム・ライスは『アラジン』からの続投。作曲は前3作のアラン・メンケンからエルトン・ジョンに交代。そのせいかどうかは知りませんが、今回の映画では、この涙もろい僕も泣けませんでした。父ライオンのムファサが死ぬシーンではハンス・ジマーのスコアが場面を盛り上げますが、僕が期待しているのはこういうものではない。歌とアニメが渾然一体となって観客を恍惚とさせるシーンを期待していたのだ。今回の映画にはそれがない。オープニングのアニメは(何度観ても)すごいけれど、これはバックに歌が流れていてもミュージカルとは言えない。シンバとナラが象の墓場に向かう途中で歌い踊る"JUST CAN'T WAIT TO BE KING"は全体から浮いている。ジェレミー・アイアンズが歌う"BE PREPARD"は珍品だが、これも印象的なナンバーとは言えない。ミュージカルを期待していた僕は、大きく失望させられてしまった。辛うじて物語の中で生きていたのは、プンバァとティモンが幼いシンバを励ます"HAKUNA MATATA"ぐらいのものだ。

 アニメは技術的に素晴らしいと思う。オープニングは芸術品だし、ヌーの暴走シーンも臨場感あふれる迫力のあるものだった。だが全体に、動物の擬人化がバランスよく成功しているとは思えない。ある動物は擬人化し、ある動物はそうしないというあたりにも徹底しきれないものを感じるし、キャラクターのデザインも中途半端なものが多かったと思う。

 盗作云々以前に、つまらないと思ったのは僕だけですか?


ホームページ
ホームページへ