ピーターズ・フレンズ

1994/11/30 銀座テアトル西友
学生時代の仲良しグループが大人になって抱える悩みとは……。
舞台劇の雰囲気があるしゃれたコメディ。by K. Hattori


 10年ぶりに友人たちがそろって何日かを過ごすうちに、学生時代には思ってもいなかった問題や人生を、ひとりひとりがあらわにしてしまうというコメディー。それぞれのエピソードはかなり深刻で、それぞれ独立して1本の物語が作れそうなもの。それを惜しげもなく濃縮してひとつの物語の中に押し込んだ、幕の内弁当のような映画です。

 中心になるエピソードというものは特になくて、それぞれの話がほぼ平行して描かれてゆく。気になるシーンやエピソードはいろいろあるけど、僕が一番面白がったところは、エマ・トンプソンが夜中にピーターの部屋をたずねるシーンと、ケネス・ブラナーの奥さん(エマ・トンプソンじゃないよ)が、夜中に冷蔵庫をあさるシーンかな。トンプソンの夜這いシーンは、彼女がドアの前に立った途端にどうなるか見えてしまうんだけど、何しろ真面目な顔した彼女ですから、いきなりあんな大胆な行為に出るとは思わなかった。あのアプローチのしかたはスゴイよね。わかりやすいけど……。でもねぇ、エマ・トンプソンですよ、エマ・トンプソン! 『日の名残り』の後にこれを観ると、やっぱりびっくりしますよ。この後さらに強烈なシーンもあって、これにはビックリを通り越して笑うしかない。ワハハ!

 離婚寸前の夫婦が仲直りする一方で、なんとか体裁を保っていた夫婦が別れてしまう人生模様。ジングル夫妻の仲直りを、みんなが下の部屋で観察するシーンは、ふ〜ん、へ〜、ほ〜。大人ですね。

 最初の晩餐シーンなど、短いカットをつなぎながら、本当に楽しそうな食事風景を作っているブラナー監督の技量はすごいですね。この監督のセンスが最も光るシーンかもしれません。今回は室内で繰り広げられる舞台劇のような映画だったけど、来年早々には新作『フランケンシュタイン』が観られるはず。こちらは大ロケーションを使った壮大なスペクタクルになりそうだし、今から楽しみだな。

 前半から中盤まではそれなりに楽しめた映画だけど、終盤、ケネス・ブラナーが酔っぱらってクダ巻くあたりから、途端につまらなくなる。ピーターの告白以降はぜんぜん面白味のない、陳腐なメロドラマになってしまうんだなぁ。まるで学生芝居ね。ピーターの告白は友人たちには意外でも、僕には全然意外じゃなかった。結果として、登場する人物たちの中で、中心となるピーターが一番つまらない人物になってしまっている。ここはもうひとつヒネリが欲しかった。それとも、この映画が作られた92年なら、みんな驚いたのかしらねぇ。

 エンディングにオープニングと同じモチーフを持ってくるあたり、いかにも技巧的なんだなぁ。なお、エンドクレジットの最後に、ジングル夫妻の最新作が流れるから、これは聞き逃しちゃだめですよ。


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