マスク

1995/02/07 有楽町朝日ホール(試写会)
ジム・キャリーの魅力がCGで消されてしまったようにも感じる。
愛犬マイロ君がかわいいなぁ。by K. Hattori


 普通の映画だと、この不思議な仮面の由来や効能を最初に説明しそうだけど、この映画ではそうしたものは一切ない。海底工事中に古びた箱の中から飛び出した古い仮面が、真面目だが風采の上がらない銀行員のスタンリーの手に渡り、やがて巻き起こされるドタバタまでを、テンポ良く、スピーディーに描いて行く。全く無駄がない見事な構成だ。

 仮面の不思議な力で一種のスーパーマンへと変身するスタンリーを演じたのは、『エース・ベンチュラ』で素っ頓狂なマイアミのペット探偵を演じたジム・キャリー。キャリーは前作同様、ぐにゃぐにゃとよく動く顔と身体を披露するが、今回はそんな彼の芸を最新SFXが250倍(?)に誇張。抱腹絶倒の個人芸とテクノロジーの共同作業で、縦横無尽、なんでもありのギャグが、マシンガンのように繰り出される。キャリーの芸風は『エース・ベンチュラ』で飲み込んでいたけれど、この映画は彼の個性を十分に引き出した傑作。これで笑わなきゃ嘘だ。

 とにかくありとあらゆるギャグのオンパレードなのだが、僕が最高に笑わせてもらったのは、警官隊に追いつめられたマスクがマラカスを振りながら歌い踊ると、それに合わせて警官隊も踊り出すところ。日常描写へ突然ミュージカルシーンを挿入するギャグは、J・ランディスの『ブルース・ブラザース』やT・バートンの『ビートルジュース』にも見られるけれど、『マスク』の場合はもっと徹底している。

 前作がペット探偵の話だったからではないだろうが、『マスク』でも主人公が飼っている犬が、重要な役目を果たす。この犬がとにかくかわいい。それにかしこい。見事な忠犬ぶりには舌を巻き、クライマックスでの活躍には拍手喝采。パチパチ。

 ナイトクラブの歌手ティナを演じたキャメロン・ディアスはこの映画がデビュー作とのことだが、モデル出身というスタイルの良さとチャーミングな表情が抜群にいい。彼女とマスクがクラブで踊るシーンは、ダイナミックな音楽と振り付けにクラクラする、楽しさいっぱいの名シーンだ。あそこまで見せるなら、ヘタなSFXなんて要らないと思ったほど。

 とにかく見どころいっぱいのコメディ映画。話の種に見ておいて絶対損をしない仕上がりだ。話題になっているCGを多用したSFXやアニメーションとの合成も、例えば『ロジャー・ラビット』などよりはるかにセンスがいい。SFXだけでなく、地の芝居もきちんと作っていて、悪役の面々もそれだけでアクション映画を作れるような不敵な面構えの連中ばかりだし、スタンリーの同僚の男もなかなか。マスクを追いかける刑事もいい雰囲気。

 ところで、マスクが要所要所で絶叫する台詞は映画の引用みたいだけど、オリジナルを知ってるとさらに映画が楽しめるんでしょう。僕はあいにく……。


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