ノー・エスケイプ

1995/03/05 丸の内松竹
レイ・リオッタが監獄島から脱出するサバイバル映画。
男ばかりで色気がないのと脚本が欠点。by K. Hattori


 上官を殺した軍人レイ・リオッタが送り込まれたのは、現代の流刑地、監獄島アブソロム。島には数百人の凶悪犯達がひしめき合い、過酷な環境の中でサバイバルをしている。人工的な『マッド・マックス2』状態と言いましょうか、あるいは大の大人達が寄ってたかって『蝿の王』状態に陥っていると申しましょうか、とにかく暴力と恐怖だけが秩序を維持しうるという、そんな場所なんでございます。

 主人公のリオッタはそんな島から脱出することを欲しますが、アブソロムは本土から300キロ以上離れた絶海の孤島。囚人達の様子は島の周りをぐるりと取り囲んだセンサーと、上空はるか彼方から島の様子を見守る監視衛星で完全にモニタされている。島を監視する刑務所長は、囚人達が互いに殺し合うのをモニタしてはニタニタ笑っているような、デブのサディスト。はっきり言って嫌な野郎だが、こういう奴は最後には死ぬことになっているから、なかば安心していられるのも確かなんですねぇ。

 主人公がなぜ周囲に対して反抗的なのか、なぜ炎を見ると息がゼーハー荒くなって目が虚ろになってしまうのか、説明が最後の方で出てくるけど、あまり観客の同情を引くものではない。せめて、主人公には本土で彼の帰りを待ちわびている妻か恋人がいるなど、多少の艶っぽさを加味して欲しかった。あるいは、殺された恋人の復讐のために刑務所に潜入した、でもいい。とにかく、登場人物が全員男ばかりという映画は暑苦しくてかなわん。

 湖畔に村を作って生活しているランス・ヘンリクセンの一派は、女性がひとりもいなくて、なぜ精神の安定がはかれるのだろうか。人口の再生産がない男所帯で隔離されれば、ジャングルの中の荒くれ一派みたいになる方が、むしろ自然だと僕には思える。ヘンリクセンは普通じゃないよ。あそこまで理性的だと、かえって気味が悪いね。

 舞台は近未来なんだけど、裸で島に放り出された囚人達という設定だから、道具立てにはぜんぜんお金がかかっていない。ボロをまとった男達が、ジャングルの中を奇声を上げながら走り回るだけの、いたって気楽な作りになっている。どう考えてもB級。これも、もう少し脚本をひねると、まだ多少は観られる映画になったのに、なんの工夫もない筋立てと演出には、途中でくたびれてきた。

 最大の欠点は、主人公レイ・リオッタのキャラクターにある。もっとマッチョタイプの、筋骨隆々の男でないと、この物語は成立しないんじゃないかな。あるいは、主人公が特殊部隊出身で、ありとあらゆる格闘技とサバイバル術をマスターしているという設定にするとかさ。単なるヘリコプターの操縦士に、あれだけのバイタリティーがあるっていうのが、この映画最大の不自然なんだなぁ。


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