ディスクロージャー

1995/03/07 丸の内ピカデリー1
デミ・ムーアが部下であるマイケル・ダグラス相手にセクハラ?
小道具のコンピュータ技術がお粗末。by K. Hattori


 珍味『ライジング・サン』の原作も書いた、マイケル・クライトン原作の逆セクハラ物語というから、いかなるキワモノかと思いきや、意外や意外、まともな企業内抗争ものだった。

 問題の逆セクハラは物語の本筋とはあまり関係がないものの、それでも重要なテーマであることは事実。セクハラで訴えた男が、部下の女性に無意識にセクハラしていたりするのは、日本のおじさま方にはドキリとする話ではなかろうか。逆に言うと、アメリカ人もやっぱり、何気なく女性の肩もんだり、オシリを触ったりするわけね。

 会社内のセクハラをめぐって、主人公と奥さんの意見が真っ向から対立するところも面白かった。セクハラなんて日常茶飯だという奥さんに、なぜ訴えないんだと詰め寄る夫。そんなことできっこない、あなたもセクハラを迫った上司に謝って許してもらいなさい、と言い返す妻。男と女の、意識の違いだね。でも、この奥さんみたいに考えている女の人って、おそらく多数派だと思う。女の人が社会に出て行くとき、男以上に引き受けなければならないコストって、すごく多いんだろうね。

 この物語からセクハラというテーマを除くと、実はあとに何も残らない。やっぱりセクハラはこの映画最大のテーマなんだ。

 もう一方にハイテク企業の内部抗争という問題があるんだけど、これは描き方がステレオタイプで、ちょっとお粗末だった。そもそも、主人公がなぜ社長一派から疎まれているのか、その理由が定かでない。主人公が優秀なエンジニア兼チームリーダーであることは、映画を観ればわかること。彼を排除することで生じる会社のメリットが何なのかが、さっぱりわからない。単なる気まぐれ人事? まさか。

 映画に登場するハイテク描写については、いろいろと笑っちゃうところもある。会社の浮沈を賭けた新製品が2倍速CD−ROMドライブでは、合併先の企業も浮かばれまい。むしろ、あの派手なバーチャル・リアリティ型ファイル検索システムの方が、商品価値はあるよね。あれは究極のグラフィカル・ユーザー・インターフェイスですよ。

 ただし、コンピュータのずぶの素人ならともかく、日常的に使っているユーザは、あのインターフェイスじゃかったるくてしょうがない。ひとつのファイルに到達するのに、いちいち廊下を歩いて、引き出し開けて、書類をかき回して……。要するに、検索時間は紙のファイルと変わらないんだな。これって、最大の欠点じゃないのかね。

 それにさ、ファイルを探している最中に、あの建物のすき間から下に墜落しちゃったりしたら、悲惨で目も当てられないぞ。僕は生命を危険にさらしながら、データファイルの検索なんてしたくないぞ。


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