JM

1995/04/15 松竹セントラル1
アメリカにも異業種監督をありがたがる傾向があるらしい。
ロバート・ロンゴの演出はまるきり素人。by K. Hattori



 どうせたいした映画ではあるまいと思っていたら、やはり案の定たいした映画ではなかった。徹底したB級感覚はともかくとして、映画としての完成度が低い。とにかく何がやりたいのか意味不明。全体の構成が支離滅裂。これじゃまるきり素人じゃないか。

 原作者ウィリアム・ギブスン自身が脚本を書いているのだが、映画の悪さの8割はこの脚本の悪さに原因がある。彼の小説を僕は面白いと思ったことがないんだけど、それと同じことがそのまま映画でも起こっている。アイディアいっぱいの細かなツールばかりが目について、本筋の物語がおろそかになるというのが、ギブスンの小説に対する僕の印象。デビュー作以来何冊かの本を読んだけど、面白いと思ったことなんて1度もないよ。明らかに『ブレードランナー』の影響を受けた薄汚い未来都市のイメージと、ハイテクとバイオテクノロジーの融合、それにやたらと登場する造語の数々が目新しかっただけで、何がサイバーパンクだ馬鹿野郎。つまらないんじゃしょうがないよ。先輩フィリップ・ディックも、ゴミクズのようなアイディアツールをバカスカ登場させる作家だったけど、彼の作品、特に短編の面白さは抜群だもんね。

 今回ギブスンの書いた物語は、じつに陳腐ですよ。その陳腐さをごまかすように、いろんな細かな道具立てで粉飾しているけれど、まぎれようもなく陳腐なものは陳腐。ろくでもないシロモノなのです。特に、場当たり的に人物を出したり引っ込めたりする手際の悪さにはげんなり。この程度の物語にしては登場人物も多すぎる。ドラマ部分とアクション部分のバランスが悪いし、全体に説明不足なところも目に付く。目先の場面にしか手が回らない、スケールの小さな展開にはがっかり。ギブスンはアイディアマンだけど、それをうまく物語に落とし込めない人ですね。この映画を観ると、彼の書いた『エイリアン3』が没になった理由が、なんとなく想像できるじゃないですか。たぶんアイディアばかりが盛りだくさんで、中身のないホンだったんでしょう。

 これが映画監督デビュー作のロバート・ロンゴだけど、彼の作り出したビジュアル・イメージってのはいったいどこにあるんでしょう。僕はそれだけを期待したんですけど、どこにもアーティスティックな臭いがしないんだなぁ。少なくとも、映画監督としては、アクション場面の取り方がひどくへたくそですね。まるきり迫力不足で白けます。CG画面の密度は高かったけど、今さらCGだけじゃ驚かないしなぁ。同じようなシーンなら『バーチャル・ウォーズ』の方が面白かったぞ。VR技術を使ったオペレーティングなら、『ディスクロージャー』の方が徹底していたしね。

 キアヌもタケシも魅力薄で、残念な映画でした。



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