スターゲイト

1995/04/26 スカラ座
装置や仕掛けが大掛りなのに物語は時代錯誤な植民地主義。
筋運びも予定調和で驚きが少ない。by K. Hattori



 筋立てやテーマに限れば、見るべきものがほとんどない映画。ていねいにきちんと作っている感じ強く、映画のプロの仕事を堪能できるものの、SF映画に絶対必要な破綻すれすれの強引さが欠けている。物語に飛躍がなく、観ていて常に次の一手が読めてしまう。SF風活劇としても、アクションシーンがいまひとつ盛り上がらない。最後の大蜂起のシーンなんかは、もっとワクワクさせてほしい。

 エジプト古代遺跡や神話の神々を、異星人に置き換えるアイディアそのものは悪くないと思う。映画の前半は、比較的面白く観られるんだ。特に、キーになる文字が全てそろい、スターゲイトが開く瞬間などは、なかなかすばらしいと思う。異世界につながったスターゲイトが、水面のような光をたたえながら、探査機械や調査部隊を次々に飲み込んで行くあたりなど、この映画一番の山場でしょう。

 登場人物の造形がいまひとつ浅くて、中途半端な印象を受ける。もっと掘り下げれば、まだましな映画になったと思う。中心になるのはカート・ラッセル演じる軍人と、ジェームズ・スペイダー演じる考古学者(言語学者)。タイプの違うこの二人が、時に反目しあい、時に助け合いながら、地球への帰還を目指すというのがこの場合とるべき道でしょう。よくあるパターンといえばそれまでなんだけど、そうしたパターンがあってこそ、観客は映画の世界に入っていけるわけね。

 映画の中盤から中盤にかけては、ほとんどふたりの活躍が映画の中心になるんだけど、ラッセルの軍人としての硬派でヒロイックな活躍がほとんど見られないのは大いに不満。また、無防備にスタンドプレーを演じ続けるスペイダーの呑気さには、いらだちさえ感じる。スペイダーは、はじめから地球に帰るつもりなんてないんじゃないの? 帰り方がわからなくて途方に暮れるべきところなのに、やれ日焼け止めがないだのなんだの、あのくつろぎ方はいったい何なんだ。

 結局この映画って「未開の国にやってきた文明人が、その国で新しい王様になる」という、ほとんど植民地的発想でできているんだよね。描かれているものは、「冒険ダン吉」とほとんど同じですよ。僕はジッポをめぐるくだりで、そうした物語の骨格に気がついてしまった。そのあとは、どうも砂をかむような味気ない気分にならざるを得ませんね。SF仕立てのアメリカ映画だからなかなか気がつきづらいかもしれないけど、例えば主人公たちを日本人にして、異世界を砂漠から東南アジアに変更すると、すごくヤバイ映画になりそうでしょ? 各国大使館から厳重抗議ものですよ。

 そうそう。ジェイ・デビッドソンの衣装は、ほとんど『魔界転生』の沢田研二です。絶対にマネだね。


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