タンク・ガール

1995/11/29 恵比寿ガーデンシネマ
ロリ・ペティ目当てで観に行った映画なんだけどイマイチ。
断片的なイメージの連続について行けない。by K. Hattori



 ノリだけで作った映画にしては手が込んでいる。全体にすごくチャチなんだけど、所々に目を見張るようなシーンがある。すごくわかりやすいかと思えば、飛躍が過ぎて付いて行けないところもあり、アンバランスでがたがたなようでいて、安っぽさ特有の魅力も捨てがたい映画。主人公の乗るタンクのごてごてした装飾が、この映画の全てを象徴している。話の展開は行き当たりばったりでご都合主義に満ちているが、それを恥ずかしげもなく押し通してしまう厚顔無恥さは立派だと思う。

 コミック原作の映画ということを全面に打ち出しているのは、スタローン主演の『ジャッジ・ドレッド』との共通点。カラフルなコラージュやアニメーションが絶え間なく挿入される様子は、悪意と嫌味のない『ナチュラル・ボーン・キラーズ』といった雰囲気で、僕はこういうのが嫌いじゃないのです。中身がどんなにデタラメでも、出たとこ勝負の支離滅裂さに満ちていても、楽しければそれでいいじゃないですか。楽しく元気よくをモットーに作られた映画に、細かい分析や批評は似合わない。

 ただ、この映画が面白いかというと残念ながら僕には面白くなかった。主演のロリ・ペティは『ハートブルー』や『プリティ・リーグ』で個人的に注目していた女優だったんだけど、残念なことに今回彼女はどうもミスキャスティングぽい。主人公のタンク・ガールを演じるにしては、ロリ・ペティってちょっと線が細すぎるような気がする。色気もないしなぁ。それに「ガール」と言うにしては、彼女って結構トウが立っていませんか?

 もちろん、所々に面白いところがないわけじゃない。敵役にマルコム・マクドウェルを持ってくるあたりなんざぁニクイねぇ。彼は『時計じかけのオレンジ』で「雨に唄えば」を歌いながら女をレイプするパンキッシュなストリートギャングを演じていた人です。今回は彼が背広姿で登場し、ミュージカル映画のビデオを見ながら突っ込んでくるタンク・ガールにやっつけられるのだから、まるきり立場が逆になっているのですね。マクドウェルが持つ秘密の殺人道具も面白かった。背中に蛇腹になったペットボトルのようなものを突き立てると、特殊なポンプが人間の身体の中から水分をゴボゴボと吸い上げて行くというアレです。

 アクションもギャグもSF的な仕立ても、中途半端な悪ノリだけが目立つ。中でも残念だったのは、巨大な売春宿兼ナイトクラブのような場所で、その店の女主人が「レッツ・ドゥー・イット」を歌わされる場面。ここから客も交えての大合唱となり、レビューシーンっぽくなるのだが、この演出が物足りない。半裸のダンサーとプールまで用意してあるのに、なぜバズビー・バークレーしてくれないんだ!


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