トイ・ストーリー

1996/02/28 中央会館(試写会)
スティーブン・ジョブスもピクサー社を買収してこれで浮かばれた。
買収直後は業界で大笑いされてたもんなぁ……。by K. Hattori


 そういえば少し前に「コンピュータグラフィックス映画」として売り出した『トロン』という映画もディズニー映画だったなぁ……とか、アップルを追い出されてネクストでもパッとしなかったスティーブン・ジョブスがCGメーカーのピクサーを買ったときは「懲りない奴だなぁ」と思ったものだったけど、こうなってみるとジョブスにも先見の明があったと言わざるを得ないなぁ……とか、まぁ各人各様いろんな先入観があって観る映画です。きっかけはどうあれ、この映画はそんな先入観を吹き飛ばすだけのパワーがあふれる、素晴らしい面白さに満ちあふれた映画に仕上がっています。

 僕のいる会社ではCGの仕事もしているのですが、僕自身はCGの担当でなくて本当に良かった。この映画はおそらく日本でもヒットするでしょう。その時点で、この映画のクオリティがCGアニメのひとつの基準になることは確実です。CGって言ってもこれはアニメーションだから、アニメーターという作家的職人たちの資質が面白さを左右しているんだよね。この映画でもアニメーターたちが細かな部分でじつに効果的な凝り性ぶりを発揮して、画面全体の面白さを巧みに盛り上げている。こうしたディテールの魅力ってのは全体の演出がどうこうというレベルではなく、スタッフたちの個人技の部分が多いはずです。ピクサーには短編『ティン・トイ』以来の優秀なスタッフがいるからこそ、これが可能になるのでしょう。(プラスチックのおもちゃの兵隊にくっついている「バリ」が素晴らしい!)

 この映画は未来永劫「世界最初の全編フルCG長編アニメーション」としての評価しか受けられないでしょうが、その評価に応えるだけの内容をきちんと実現しているのが偉い。この映画ではディズニーアニメのオープニングロゴまでちゃんと3Dになっているのも泣かせます。筋立ては童謡「おもちゃのチャチャチャ」みたいなもので、他愛のないものと言えばこれほど他愛のないものはない。それでもキャラクターをちゃんと作って、時にニコニコ、時にホロリとさせるあたりは脚本がよくできてます。ウッディのバズに対するやきもちもよく伝わってくるし、バズが自分の正体を知って打ちひしがれる様子は涙なしに観られません。

 動き出したおもちゃたちが生き生きと動き出す部分と、人間の前で動かないおもちゃに戻る場面の切り替えが見事でうなりました。すごく自然で、こうした表現はCGならでは、アニメならではでしょう。小さい頃、片付けたはずのおもちゃが散らばっていて親にしかられた経験や、お気に入りのおもちゃが行方不明になったり、ひょっこり出てきた覚えはありませんか? その秘密はこの映画の中にたっぷりと描かれています。僕はこの映画が気に入りました。


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