最も危険な遊戯

1996/03/10 シネマ有楽町
松田優作主演のハードボイルド・アクション映画。
主人公のキャラクターと強引な筋はこびが見もの。by K. Hattori


 オープニングの雀荘シーンから変だった。主役は松田優作なんだけど、彼が石橋蓮司や内田裕也と麻雀打ってボコボコに負け続ける。松田と石橋がそれぞれ大三元と国士を張っていて、松田が4枚目の白をみすみす石橋に振り込んでしまったのがそもそも怪しい。その後も高めを上がったと思ったら上家に頭ハネを食らうなど、さんざんな目にあってボロ負け。もう半荘、もう半荘だけ、逆転のチャンスをくださいよ。おかしいなぁ、僕って麻雀で負けたことないんですよ。石橋ら3人はそんな松田を見下ろしてニヤニヤ。へんだなぁ、怪しいぞ、あんたら3人グルになってんじゃないの? 松田演ずる主人公はブツクサ文句言うのだが、勝負事の中でこれは負け犬の遠吠えでしかない。ふざけんな! 哀れ松田は身ぐるみはがれて道に放り出されるのでした。

 要するに、主人公の鳴海昌平がすごーくかっこ悪いわけです。情けないぐらいに弱っちい。殴られると卑屈に這いつくばるしね。これが「本当は強い男の世を忍ぶ仮の姿」にどうしても見えないあたりがこの映画の変なところで、観ているこっちは「こんな主人公でアクション映画が成立するのかね」と思わされてしまうわけさ。もちろん中盤以降はちゃんとアクション映画になるんだから、これは見せる側の作戦なんだけど、それにしてもねぇ……。

 この映画は物語にもずいぶんと無茶なところがあるし、話の組立にもわかりづらいところが多々あるんだけど、そんなことお構いなしに物語がズンズン先に進んでしまう強引さには恐れ入る。そもそも、なぜ主人公には誘拐犯たちの隠れ家がわかったんだろう。企業グループと警察がグルになって誘拐をしている理由も良くわからない。警官隊が鳴海をぎりぎりまで追いつめながら、みすみす逃走させてしまう理由も解せない。謎だらけ。

 やくざの情婦のマンションに侵入し、女を脅して男の行方を知ろうとしたまではわかる。女が口を割らないとなると、男が女に電話してきたときに受話器を奪い取って電話口で女を犯す。(当然、最初嫌がっていた女は突然燃えはじめるわけですな。)男は逆上して飛んでくる。普通ならここで男をとっつかまえるなり、ここから尾行して隠れ家を探すなりするんだろうけど、主人公は女を連れて自分の住みかに連れて帰っているんだから謎は深まる。しかも女に金を渡して、1時間後に出て行けと言う。行動が支離滅裂。どこか狂っている。

 最高に変なのは、警察が主人公の住みかから女をさらったのを見た主人公が、刑事たちの乗る自動車を延々走って追いかける場面。自動車対人間の熾烈なバトルは、自動車が根負けして最後は肉弾戦。普通振り切れるだろう、相手は自分の足で走ってるんだから! なんだかスゲー映画を観てしまった気分。


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