ブロークン・アロー

1996/03/23 日本劇場
この映画の製作者たちには核照射を浴びた水が被爆するという概念がない。
スレイターとサマンサ・マシスに免じて許す。by K. Hattoriby K. Hattori


 大失敗です。朝1番の上映を観ようと思って劇場に入ったら、もう本編が始まっているじゃないですか。東宝系は映画の前にCFと予告編を20分ぐらいやっているのが常なんですが、第1回目の上映は予告編がないのかな。おかげで最初の10分ぐらいを見逃してしまいました。それでも充分に楽しんだので、僕は満足していますけどね。

 ジョン・トラボルタが悪役というキャスティングが、まず観客の意表を突いています。『パルプ・フィクション』の気のいいヤクザが印象に残っているので、最初はどうなることかと思いましたが、なかなかの悪党ぶりに感心します。クリスチャン・スレーターがトラボルタと対立する若いパイロットを演じていますが、この人は『カフス』や『トゥルー・ロマンス』のようなチンピラ役が似合う人で、今回の役もその延長にある役柄です。結構似合ってましたね。スレーターは癖のある風貌と喋り口調で、どう見てもチンピラ然とした雰囲気になってしまう人。『モブスターズ』のラッキー・ルチアーノ役とか、とにかくチンピラが似合うんだよね。

 彼がそんなキャラクターを脱するきっかけになったのは『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の記者役だったわけだけど、これは最初リバー・フェニックスが演ずるはずの役でした。フェニックスの突然の死がきっかけでこの役を得たスレーターは、その後『告発』で弁護士の役まで演じるに至るのだからずいぶんな出世です。(もっとも、これは似合わなかったけどね。)今回スレイターの相手役になるのが、フェニックスの元恋人サマンサ・マシス。スレイターもマシスも、フェニックスの死を乗り越えてここまでメジャーな俳優になりました。

 そのマシス嬢ですが、僕は彼女と『スーパー・マリオ』以来の知り合いですから、最初トラックで登場したときには「老けたなぁ……」と思いました。これは撮影の問題だと思います。途中からあまり気にならなくなりましたからね。(どうでもいいけど、この人ってジュディ・ガーランドに雰囲気が似てませんか? 気のせいかな。)個人的には前回マシスを観たのが『若草物語』の地味な役でしたから、今回彼女が出突っ張りで大活躍なのは嬉しい限りです。

 映画は舞台装置のほとんどが砂漠で華やかさがないけれど、アクション場面は迫力満点で僕は大いに気に入りました。最後の列車の場面なんて、セガールの『暴走特急』より100倍ぐらいスリリングだし歯切れがいい。核爆発で地下水が全部汚染されるのではあるまいか等、細かいことは気になりますし、脚本には伏線が生かし切れていない部分があるけど、これも全体の中では些細な傷に過ぎません。20ドル紙幣のやり取りや、最後の自己紹介などの小技が効いていて、なかなか痛快な仕上がりの映画です。


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