マネートレイン

1996/04/21 日劇プラザ
スナイプスとウディ・ハレルソンが現金輸送列車を襲うアクション映画。
アイディアも脚本もいいのに、演出が弱かった。by K. Hattori


 主演がウェズリー・スナイプスとウディ・ハレルソンの映画と言われて、92年の『ハード・プレイ』がすぐに思い浮かばないようでは映画ファンとは言えません。すばしっこく抜け目のないスナイプスと、どちらかと言えばぼんやりとした印象のハレルソンの名コンビぶりに、ハレルソンの恋人役ロージー・ペレスの好印象も相まってなかなか素敵な映画になっていました。ハレルソンはその後オリバー・ストーンの話題作『ナチュラル・ボーン・キラーズ』で一躍メジャーになるかと思わせておいて、現代版西部劇と言われていた『ザ・カウボーイ・ウェイ』の日本国内での公開は見合わされてしまったようだから、やっぱりまだまだマイナーな役者なのかなぁ。僕は好きですけどね。

 今回の映画では黒人のスナイプスと白人のハレルソンが、同じ孤児院育ちの義兄弟という役柄。ふたりして同じ地下鉄公安官の仕事についていて、主におとり捜査で地下鉄構内のスリやかっぱらいの類を捕まえます。冒頭の見事なおとり捜査ぶりと、映画のタイトルにもなっている「マネートレイン」の見せ方はいいテンポで、僕はここまで一気に映画の中に引き込まれました。

 マネートレインというのは地下鉄の運行時刻表には載っていない特別な列車で、地下鉄のその日の売上を各駅から回収して回る、現金輸送列車の呼び名です。時によっては400万ドルの現金を運ぶこともあるこの列車の警戒は厳重を極め、閉ざされた地下鉄という空間的な制約もあって、これを強奪することはまず不可能。この映画では、そんな不可能を可能にする男たちの姿が描かれるのですが、犯罪サスペンスとしてはこのあたりの描写がちと弱い。

 ギャンブル狂でお調子者のハレルソンに比べ、この映画のスナイプスはちょっと優等生過ぎて面白くない。もう少し人間的な弱みや傷が見えると、物語にぐっとコクが生まれたと思うんだけどな。スナイプスには不良っぽい持ち味があるんだから、どこかで「俺はもうそういうことはみんな卒業したんだ」みたいなエピソードが入ると、ハレルソンとの凸凹兄弟ぶりが引き立った。黒人と白人の兄弟という面白いアイディアのわりには、それが生かされていないのは惜しい。

 終盤のマネートレイン強奪と脱出劇はスリルもサスペンスも過熱せず、アクション映画としては大いに物足りない展開。それまでのお話がよかった分、ここがピリリと締まらなかったのは残念。同じ地下鉄を舞台にしても『スピード』とは大違いでした。

 ハレルソンに愛されながらも、スナイプスと結ばれるプエルトリコ系の新人公安官グレイスは魅力たっぷり。演じたジェニファー・ロペスはあまり見慣れない顔ですが、これからは注目です。


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