フロム・ダスク・ティル・ドーン

1996/04/26 パンテオン(試写会)
銀行強盗兄弟の逃亡劇が、なぜか途中から吸血鬼映画に、
さらにゾンビ映画になってしまうという怪作。by K. Hattori


 僕はロドリゲスの前作『デスペラード』を全然評価していないんだけど、 この新作バンパイア映画は面白かった。内容はギャングの明日なき逃避行が、 いつの間にかバンパイア映画になるというものだけど、はっきり言って話は くだらない。吸血鬼をテーマにした映画はコッポラの『ドラキュラ』以降、 『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』などがヒットしたこともあってハ リウッドでは一種のトレンドになったらしく、近々日本でも公開されるエデ ィ・マーフィーの『ヴァンパイア・イン・ブルックリン』まで話題作が目白 押し。この映画はそんな吸血鬼ブームに乗った映画のひとつです。

 古典的な吸血鬼映画と比較すると、この映画は吸血鬼版『エイリアン2』 という感じ。とにかく質より量で勝負。中身はオカルトではなく、果てしな く行われる殺戮が目玉のスプラッター映画です。モンスターの性質も吸血鬼 というより、どちらかというとロメロ映画『ゾンビ』のリビングデッドに近 い。映画の中ではバンパイアに腕をかまれた牧師が子供たちに向かって「私 はもう死んでいる」と告げるくらい。血を吸われると伝染するんじゃなくて、 腕でも足でも噛まれれば即伝染するらしい。

 『ゾンビ』からの連想で言えば、この映画に重要な登場人物のひとりとし てトム・サビーニが出演していることは印象深い。今回彼は特殊メイク担当 ではなく、純粋に役者として出演しているようですね。なかなかいい味出し ています。この映画には『ゾンビ』から引用したと思われる場面がいくつか あって、サビーニがそれをやるとセルフパロディみたいでおかしくってしょ うがない。

 サビーニに限らず、この映画は出演者のキャスティングが妙にきまってい るのですね。脚本も担当したタランティーノはいつものヘラヘラした顔をか なぐり捨てて、血の気の多い性犯罪者を演じている。テレビ「ER」の青年 医師ジョージ・クルーニーは、タランティーノの兄で筋金入りの銀行強盗。 『デスペラード』でヒロインを演じたサルマ・ハエックは、酒場のダンサー にして女バンパイア。同じく『デスペラード』でナイフの殺し屋を演じたダ ニー・ドレホがバーテン役で再登場。タランティーノ映画の常連ハーヴェイ・ カイテルは、妻の死をきっかけに神を信じられなくなった牧師。多少不満が あるとすれば、ジュリエット・ルイスとアーネスト・リウ姉弟の役割分担と 活躍があまり明確に描かれていなかった点。特にリウは何のために登場した んだか、これじゃわからない。

 最後の最後にオチをどうつけるかを心配していたんだけど、それなりにき ちんと落とし所を作ってくれていてひとまず安心。とりあえずロドリゲスと タランティーノを少しは見直しました。


ホームページ
ホームページへ