フェア・ゲーム

1996/04/29 松竹セントラル1
ハイテクを使った追跡劇としては『ザ・インターネット』より上出来。
原作はスタローンの『コブラ』と同じ「逃げるアヒル」。by K. Hattori


 スーパーモデル、シンディー・クロフォード演じる敏腕女弁護士が殺し屋 に狙われる。それを護衛する羽目になった、若い刑事ウィリアム・ボールド ウィン。犯人である元KGBのロシア人たちが、なぜ彼女を狙うのか。それ は観客である僕にすら最後まで謎。ただ、やたらと執念深いことだけはわか る。弁護士が死んで、ロシア人たちにどんな利益が生じるというのか。それ は全く想像の範囲外。どっちにしろこれはそういった謎解き型の映画じゃな いから、そんなことは構いはしないのだ。クロフォードにしろボールドウィ ンにしろ、自分たちが誰に狙われているかは途中で気がついたみたいだけど、 なぜ狙われているのかは最後までわからなかったんじゃないかな。そもそも、 それに興味もなさそうですね。

 この映画ではは最初から最後まで、徹底して追い詰める側と追われる側の 攻防だけを描いているところが痛快です。コンピュータと通信網というハイ テクを駆使して、逃げても逃げても的確に追跡を続ける犯人たち。こうした 描写は『ザ・インターネット』にもあったけど、サンドラ・ブロックと違っ てモデルのクロフォードは美人のぶんだけ頭がからっぽそうだし、ボールド ウィンも体育会系のノリだから、相手のハイテクに頭脳で対抗しようと言う 発想が生じないんですね。ただただ逃げ回るだけで、他に能がない。ただ、 この能の無さがちゃんと「頭脳VS肉体」という対比になっているんだけど ね。

 この話だとクロフォードが弁護士である必要なんてぜんぜんないんだけど、 これはキャスティングする段階でクロフォードの側から「ただの能なし美人 じゃイヤ。ちゃんと働いている戦う女でなくちゃ」という注文でもあったの だろうと察せられる。他業界からスターを呼ぶにはそれなりに苦労がありそ うだもんね。戦う女は駐車場で子供を虐待する母親をぶっ飛ばすだけじゃあ りません。ラブシーンの最中にだって、ちゃんと覗き魔をぶっ飛ばします。 偉い。

 ほとんど理不尽な事件に巻き込まれ、仲間を次々に失い、追手は着実に接 近してきて絶体絶命。今までの映画だと、最後はハイテク相手に素朴な肉弾 戦法が勝利を収めることになるんだけど、現代のハイテクはそんな庶民の夢 を打ち砕くに十分なほど発達してしまっている。どうやったって逃げ切れな い主人公たち。このギリギリの緊迫感は結構こたえる。

 この映画の個人的な採点をすれば、序盤の人物配置がちょっともたつくの が少し減点対象。警察にどなり込んでくる元恋人なんて必要なのかなぁ。こ の近辺はいくらでも伏線を張れそうで、結局張っていない部分ですね。ちょ っと物足りない。中盤の追いかけは満点。ただ、最後にはもう少しひねりが 必要だったね。アイディアの不足を爆発の規模で補うつもりでしょう。ま、 それなりの効果はありました。


ホームページ
ホームページへ