ゲット・ショーティ

1996/06/30 日劇プラザ
トラボルタ演ずる主人公のちんぴらやくざが、ハリウッドで映画を作る話。
助演陣が豪華だが、ぜんぜんそれが生かされていない。by K. Hattori


 主演のジョン・トラボルタが、ゴールデングローブ賞の最優秀主演男優賞を獲得した映画。逆に言えば、魅力はそれに尽きる。トラボルタの他にも、ジーン・ハックマン、ダニー・デビート、レネ・ルッソ、デロイ・リンド、デビッド・ペイマーといった、僕のお気に入りの俳優たちが出演しているし、カメオ出演した思いがけない大スターたちの登場に驚くこともある。でも何か食い足りない。そもそも物語が途中からよくわからなくなる。映画を最後まで見られたのは、トラボルタが魅力たっぷりだったからに他ならない。彼なしではこの映画が空中分解していただろう。

 内容は借金取りたてにハリウッドにやってきたB級映画マニアのトラボルタが、どういうわけか取りたてた金で映画製作に乗り出すというもの。金を巡ってトラボルタを追うギャング、プロデューサーに金を貸している別のギャング、プロデューサーの愛人である女優、女優の元夫であるアカデミー俳優などが物語に参加し、主人公トラボルタと女優との恋が生まれ、一通りゴタゴタが終わるとスタジオでトラボルタが映画を作っていてめでたしめでたし。どこがどうなっているんだか、僕は途中で頭がこんぐらがったままだ。

 途中で筋が分からなくなった原因は幾つかあって、まずは僕の頭が少し悪いこと、次が脚本がまだ未整理なこと、最後に人物の出し入れが悪いこと。持って回った演出で、ものすごく単純な場面が難しそうな場面に変わってしまっている。例えばそれは、物語の冒頭近くで主人公の親分であるモモが心臓麻痺を起こして死ぬ場面でもそうだし、主人公が金を持ち逃げした洗濯屋デビッド・ペイマーを追いつめて金を取り戻す場面でもそう。

 この映画は会話のテンポが命なんだから、物語自体はもっとスピーディーに運んで行かなきゃダメ。どうでもいいところをモタモタ進めるから、本来ならもっとたっぷりと見せるべき芝居がはしょられる結果になっている。これじゃ大物役者をずらりとそろえた甲斐がない。この映画のジーン・ハックマンは勿体なさ過ぎるよね。どの映画に出ても必ず一場面か二場面は映画をさらってしまうハックマンが、この映画では薄っぺらなただのオッサンである。ダニー・デビートもそう。もったいない。レネ・ルッソに至っては、『メジャーリーグ2』に少し顔を出していたときの方が存在感があったぞ。名脇役デビット・ペイマーも軽くあしらわれていたなぁ。

 映画を作る映画なのに、映画の魅力が全然伝わってこない。脚本を巡る騒動なのに、脚本の中身が全然読めない。曲者俳優を集めたくせに、役者たちの個性が映画の中でぶつかり合わない。唯一面白かったのは、カメオ出演にしては出番の多かったベッド・ミドラーが、ジーン・ハックマンに言い寄るところぐらいかな。ラストであっと驚く俳優が登場するのも見もの。


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