パリでかくれんぼ

1997/01/19 シネ・ヴィヴァン・六本木
ジャック・リヴェットが描くパリと、そこで暮らす3人の女性。
この程度の内容は1時間半でまとめなきゃね。by K. Hattori



 『美しき諍い女』や『ジャンヌ』のジャック・リヴェット監督が、パリに暮らす3人の若い女性を主人公にして撮ったロマンチックな恋の物語。一部にミュージカル風の場面があるということで、その手の映画が好きな僕は期待していたのだが、まず映画の長さに疲れ果てて、とてもミュージカルどころではなかった。この映画の内容で2時間半もかけないでほしい。長すぎる〜。

 ところで『美しき諍い女』にも『ジャンヌ』にも、その後完全版という、さらに長尺の映画が登場しましたよね。長くなるのがリヴェットの特徴なのかもしれないけど、『パリでかくれんぼ』の「5時間完全版」なんてものが登場しても、僕はとても観に行く気になれないぞ。

 噂のミュージカルシーンですが、僕はそれなりに楽しめました。二人の人物が歌って踊ると、二人がいきなり恋人同士になっているとか、親友同士になっているとか、こういう性急な展開はミュージカルそのものでしょう。ミュージカルは歌と踊りを使って、長い説明を省けるのです。だから、そこだけテンポが少し上がる。僕が思うに、この映画でのミュージカル場面は少なすぎますね。あと5〜6曲も歌を入れれば、映画はもっとスピードアップされて、上映時間が1時間半で収まったに違いない。

 実母を探す図書館司書イダを演じたロランス・コートは、『パリのレストラン』にも出演してましたね。この人だけは、映画の中で歌わないんですけど、なぜでしょう。彼女のエピソードを歌で綴れば、それだけで映画は30分短縮できたぞ。公園で見知らぬ男に話し掛けられたところから、部屋に帰って猫と話したり、図書館で年配の女性に話し掛けたりまで、歌でつなげば5分で終わるじゃん。どうでもいいけど、彼女が公園で食べていたホットドックは美味そうだったなぁ。

 これをミュージカル映画と考えると、出演者たちの歌の不味さと踊りのいただけなさは致命的。中でもひどいのは、ルイーズ役のマリアンヌ・ドニクールで、音程も不安定だし声も良くないし、なんで彼女に歌わせたのか大いに疑問。歌わなければ、3人の中では一番僕好みのタイプなんだけど、歌ったことでそれも艶消しです。ところで彼女は5年間昏睡していたというお話なんですが、なぜそうなったのかってことは映画に描かれていましたっけ。父親の過去の秘密は、彼女が昏睡に入るより前の話ですよね。この映画の中で、彼女が昏睡していなければならない理由はどこにある。

 3人の女性の中では、ニノン役のナタリー・リシャールが一番歌も踊りもバランスが取れてました。彼女の踊りは、わりと上手いよね。最初に美人局をやるディスコの場面でも踊ってましたし、彼女は踊りっぱなしだな。

 この映画をミュージカル映画と言ってしまうのは気が引けるんだけど、じゃぁあの歌と踊りを何と形容すべきかというと、ちょっと他の言葉も見付からない。背景音楽がなくて、突然登場人物たちが歌ったり踊ったりしはじめるのは楽しいけど、やっぱりそれ以外の場面が長い。


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