七人の侍

1997/04/29 並木座
黒澤明の代表作だそうですが、僕からみるとやっぱり長すぎる。
海外向けの2時間版も残しとくべきだった。by K. Hattori



 昭和29年の時点で、2億1千万円の製作費を使った大作映画。これは普通の映画の5倍の製作費だそうです。現在の貨幣価値に直すと、幾らぐらいになるんだろう。この映画を日本映画のベスト1、黒澤明の代表作としてあげる声も多いみたいですが、僕は3時間27分という長さが欠点だと思ってます。3時間27分と言えば、僕の大好きな『椿三十郎』を頭からお尻まで2回かけて、それでも17分あまる時間です。並木座の狭いシートのせいもあるかもしれませんが、全編見通すとやはり腰や尻や背中が痛くなることは避けられませんね。この映画って5分の休憩をはさんで、前半107分・後半95分なんですよね。後半だけで『椿三十郎』が丸々収まっちゃうんだよなぁ。疲れるはずだよなぁ。

 この映画は数年前にWOWOW開局1周年記念として新たにプリントを焼き、日比谷映画で公開したことがありました。僕はそれも観てますが、今回は同じプリントでした。映画の冒頭にWOWOWのロゴが入ります。新しいプリントだから、フィルムの傷などはあまり目立ちませんでした。ところで並木座は待ち合わせのロビーがないので、映画の終り近くになると客席にどんどん人を入れてしまう。僕もドアの外で館内の音を聞きながら、中に飛び込むタイミングを見計らっていました。上映終了の5分ぐらい前に入ろうと思ったんですが、結局他の客に押されてそれより少し前に入った。その頃ってまだ映画は最後の活劇の真っ最中なんですね。このせいで久蔵が撃たれる場面や菊千代の最後などは、2回観ることになりました。この日は野武士の山塞に夜襲をかけるか思案する場面で、フィルムが途切れるというアクシデントまで発生してました。どうした並木座。

 この映画ってもう語られすぎちゃってて、今更どうこうって映画じゃないんだよね。新たな解釈の余地なんてまったくなくて、ただ現物を確認するためだけに観るような感じです。例えば仲代達矢の登場する場面とか、久右衛門の婆様のアフレコだとか、左朴全の背中に矢が刺さる場面だとか、そいういう細部ばっかり見ている。見ている時から次の台詞がわかっているので、それを今か今かと待ち構えている状態です。同じ映画を何度も観ると、結局こうなってしまうのかなぁ。でも『椿三十郎』は、何度観ても新鮮な面白さを感じるんだけどなぁ。ひょっとして『七人の侍』って映画は、退屈な映画なのか。

 クライマックスの泥沼の戦いは、何度観ても心躍る大活劇です。それまでの散発的な小競り合いで、登場人物たちも疲れているけど、観客の僕達も疲れている。いよいよ最後だと思うから、映画館の椅子の上でちょいと居住まいを正して画面を食い入るように眺める。映画を作っている方と観ている方の真剣勝負です。

 この映画は音楽の使い方が上手いですね。野武士や侍のテーマ曲もいいけど、田植え囃子が最高です。黒澤と早坂文雄が組んだ、事実上最後の作品。早坂の遺作『生きものの記録』は、ほとんど音楽なしですからね。


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