ファースト・ワイフ・クラブ

1997/05/20 ヤマハホール
ゴールディ・ホーン、ベット・ミドラー、ダイアン・キートン主演のコメディ映画。
ベテランたちの息の合った芝居がじつに愉快。by K. Hattori



 ゴールディ・ホーン、ベット・ミドラー、ダイアン・キートンの共演が話題のコメディ映画だけど、この映画は他の女優陣もじつに豪華なキャスティングになっている。自殺する学生時代の友人役は『スモーク』『アンカー・ウーマン』のストッカード・チャニング。主人公たちを援護射撃する上流社会の老婦人に『天使にラブソングを…』のマギー・スミス。ベッド・ミドラーの亭主の浮気相手に『マーズ・アタック!』のサラ・ジェシカ・パーカー。女優志願の若い娘に『ショーガール』のエリザベス・バークレイ。めまいがしそうです。

 これだけ豪華なキャストだと、個性がぶつかり合ってギスギスした映画になってしまう可能性もあるんだけど、この映画ではそのあたりを上手くまとめて、じつにソフトで温かい映画に仕上げている。もっともこれは、演出云々という問題じゃないんだよね。全面的に役者たちのキャラクターに頼っている。中心にいるのがベテランの女優たちだし、役柄の割り振りも完全なタイプキャスティング。役作りで苦労させるより、それぞれの持ち味を生かして、のびのび演技させた方がいいという判断でしょう。そしてこうした狙いは、まんまと図に当たった。

 物語自体は他愛のないものです。学生時代の親友3人が、自殺した友人の葬儀で再会する。3人の共通の悩みは夫の浮気。人生の大半を夫のためにつくしてきたのに、社会的な成功を収めた夫は、長年連れ添った妻を捨てて若い女のもとに走る。3人は一致団結して、男たちへの復讐を誓う。どうやって男に復讐するかというプロセスには工夫が見られるけど、いやに分別臭い結末はパンチがない。映画としての一番の欠点は、女たちのパワフルさに比べ、男たちに元気がないこと。本来敵役であるはずの男どもに魅力がないから、復讐劇としてのカタルシスは薄い。なんだか弱いものいじめにも見えたのは、僕が男だからという理由だけではないはずです。

 この映画に他にも欠点はたくさんあるけれど、それを補って余りある魅力があふれています。主役を演じる3人は、それぞれ自分の容姿や個性をパロディにできる余裕がある。ゴールディ・ホーンが整形で若さを保っているとか、レズバーに行って「やっぱり!」と言われる場面などは可笑しい。ベッド・ミドラーは太っていることをネタにしてるし、ダイアン・キートンの行儀の良さも茶化されている。こうしたセルフパロディはともすると嫌味になるものですが、この映画ではそれがピタリとはまって、気持ちいいぐらいでした。

 予告編などを観ても、この映画がこんなに面白いとは予測できませんでした。何度か大爆笑を誘われますが、その笑いも意地悪な笑いではない。ドタバタギャグがうるさくなっていないし、テンポの早い展開でも、話が飛び飛びになってしまうような強引さがありません。かなりきわどいテーマを扱っていると思うのですが、映画が生臭くならないのは、やはり俳優たちの力によるところが大きいのでしょう。大いに楽しませてもらいました。


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