乱気流
―タービュランス―

1997/05/26 GAGA試写室
主演のローレン・ホリーは「ジム・キャリー夫人」という以外に取り柄がない。
主役ふたりのエピソードは弱いが、飛行機は最高! by K. Hattori


 凶悪事件の犯人護送中のジャンボ機が、拘束を解かれた犯人によってハイジャックされた。機長と副機長は死亡。ロサンジェルスの市街地に飛行機を墜落させようとする凶悪犯と、たったひとりで飛行機を着陸させようとするスチュワーデスの対決を描いた映画。主演はジム・キャリー夫人でもあるローレン・ホリーと、『不法侵入』でストーカーに変貌する警官を演じたレイ・リオッタ。はっきり言って、この規模の映画でこのキャスティングは地味ですが、これは最近の技術発達で、この手の映画が意外に安く作れる証明かもしれません。それにしても、僕はローレン・ホリーのどこに魅力があるのかよくわからない。やせっぽちだし、若くないし、美人とも思えないし、芝居も上手いと思わないし……。『ビューティフル・ガールズ』でも『潜望鏡を上げろ』でも、あまり感じるものがなかったんだけど。不思議だ。

 旅客機の中に老夫婦やスケボー少年が乗り込んできたときは、正統派の航空パニック映画の再現かと思って期待したのですが、彼らは映画の序盤で早々にいなくなります。残されたのはローレン・ホリーとレイ・リオッタだけ。う〜ん、このツーショットは三流の活劇映画だ。タイトルにもなっているタービュランス(乱気流)の場面は映画の山場のはずだが、これも嵐にもまれる飛行機の様子が今ひとつ伝わってこなくて不発。機体がゆっくりと傾き、ついには裏返ってしまう場面など、アステアの『恋愛準決勝戦』を思わせるのどかさだった。

 では、この映画は面白くないのかと言うと、なぜか面白いんです。この映画はムラっ気のある映画で、面白い場面は本当に面白いし、胸がワクワクするような力強い展開が続いたりする。これは綿密な取材に裏打ちされた、脚本と演出の力でしょう。操縦士がいなくなった飛行機をスチュワーデスに操縦させるため、無線を使って次々と指示を出して行く様子はリアルで迫力があります。同型機の操縦室から手取り足取り操作を指示するベテランパイロットの姿は、すごく頼もしくてかっこいい。

 この映画には、飛行機に乗る者パイロットや、彼らを地上で支える管制職員の目に見えない絆が立体的に描かれていて、そこに僕は感動してしまった。『ダイ・ハード』でビルの中に閉じ込められたマクレーンと、ビルの外にいる黒人警官の間に友情が芽生えますが、この映画に出てくる飛行機仲間の絆はそれよりも強く感じられました。飛行機を着陸させようとする主人公をあなどり、「スチュワーデスには無理だ」と評価する警察関係者に対し、「スチュワーデスじゃありません、フライトアテンダントです」と言い返す管制職員。飛行機撃墜を命じられた戦闘機パイロットが、主脚についた障害物を機銃で打ち落とし、主人公に合図をしてゆっくりと飛び去る様子。主人公を空港に出迎えた指導機長が、主人公を「ハロラン機長」と呼ぶところなど……。わかっていても感動してしまうんだよね。『エグゼクティブ・デシジョン』の着陸場面も面白かったけど、これはそれ以上。


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