ライアー ライアー

1997/05/30 UIP試写室
ジム・キャリーの個人技が炸裂する抱腹絶倒のコメディ映画。
子役のジャスティン・クーパーに注目。by K. Hattori



 「ジム・キャリーがやり手の弁護士になんて見えるはずないじゃないか!」と勝手に決めつけ、全然期待せずに観た映画ですが、これが面白いの何のって……。普通にしてれば二枚目のジム・キャリーが、シリアスなお芝居と完全オチャラケの両極端を猛スピードで往復する、抱腹絶倒のコメディ映画でした。監督のトム・シャドヤックは、キャリーと『エース・ベンチュラ』でも組んだことのある人。その後『ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合』でエディ・マーフィを復調させた監督です。強烈なギャグの合間に、適度に泣かせどころを入れる『ナッティ・プロフェッサー』でも使っていた手口が、この映画ではより洗練されてます。

 先日観た『ザ・エージェント』も子役が素晴らしいと思ったけど、この『ライアーライアー』の子役もすごい。子役の層が厚いのは、アメリカ映画の伝統でしょうか。この映画は不実な父親を持った幼い息子が「1日でいいからパパが嘘をつかなくなりますように」と願ったところ、それが本当にかなってしまう話です。子供の願いがどれほど切実なものか、それまでに子供がどれだけ傷ついているかが観客にきちんと伝わっていないと、この願い事も、その成就も嘘っぱちに見えてしまう。

 マックス少年役ジャスティン・クーパーの表情からは、彼が父親をどれだけ愛しているか、父親と一緒に過ごす時間がどれほど楽しく幸せなものかが存分に伝わってくるし、父親が簡単に約束を反故にしてしまうことに対する失望も痛いほど伝わってきます。子供にすっかり感情移入している観客は、子供の切実な願いが成就することを、一緒に祈らずにいられない。観客をここまで乗せられたことが、この映画が成功している理由。ただロウソクを吹き消せば、それで魔法が生まれるわけじゃない。

 嘘がつけなくなった主人公が、法廷で七転八倒する様子が最高に面白い。言葉がのどに詰まって口から外に出て行かないのを、無理矢理吐き出そうともがく様子など、ジム・キャリーの独壇場です。最終的に嘘をつかずに勝訴し、そこから真実に目覚めるという展開には、もう少しひねりがあってもいいかと思いました。でもこうした部分も、子役に免じて許しちゃおうかな。最後の飛行場のドタバタなども、ちょっとやりすぎの感がなくもないし、やるならやるで、もっとテンポよく細かいギャグを入れてほしかったんだけどな……。『ナッティ・プロフェッサー』のクライマックスもドタバタが上手くなかったから、シャドヤック監督はドタバタが苦手なのかも。

 主人公の別れた妻オードリーを演じたモーラ・タイニーはあまり映画で見かけたことのない顔ですが、主人公に愛想をつかしながらも愛情を捨て切れないいじましさを嫌味なく演じてました。直前に『バウンド』を観ていたので、ジェニファー・ティリーが離婚訴訟の依頼人役で登場したのにもびっくり。エンドタイトル部分のNG集も楽しいし、皆にオススメできる映画です。


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