世界中がアイ・ラヴ・ユー

1997/06/24 有楽町朝日ホール(試写会)
ウディ・アレンの新作は楽しさが画面からはじけるミュージカル・コメディ。
期待を裏切らない素晴らしく楽しい映画でした。by K. Hattori



 『誘惑のアフロディーテ』でちょっぴりミュージカル風の演出を見せて世のミュージカルファンを喜ばせたウディ・アレンの新作は、出演者が歌って踊って恋をする、正真正銘のミュージカル・コメディです。「次はミュージカルだ」と話には聞いていましたが、いざ本物を観ると、びっくりするやら嬉しいやらで、椅子から転げ落ちそうになりました。ウディ・アレンの映画はいつも出演者がすごく豪華で、小さな役に大物俳優を使っていることがあったりするのですが、今回の配役もすごく豪華。

 監督のアレンが主演も兼ねている他、別れた妻役が『ファースト・ワイフ・クラブ』の記憶も鮮明なゴールディ・ホーン、その義理の娘役に『ボーイズ・オン・ザ・サイド』『スクリーム』のドリュー・バリモア、その実弟に『マーズ・アタック!』のルーカス・ハース、彼と『マーズ・アタック!』で共演しているナタリー・ポートマンが今回は義妹役で出演、バリモアの婚約者が『真実の行方』のエドワード・ノートン、バリモアを誘惑するケチな強盗に扮するのはタランティーノ映画の常連ティム・ロス、そしてアレンの若い恋人役でジュリア・ロバーツが出演している。この人たちが、みんな歌ったり踊ったりすると考えただけですごいでしょ。

 ミュージカル・コメディの場合、お話は他愛のないもので構わない。今回はニューヨークのお金持ち一家を中心にした恋の物語で、筋立てやタッチは今までのアレン映画とまるで同じです。ウディ・アレンの映画が好きな人なら、ミュージカル映画だという先入観なしに観ても十分に面白いでしょうし、ミュージカル映画が好きな人は、今この時期に、こうした形で新作のミュージカル・コメディが観られる幸せをかみしめましょう。『エビータ』も悪くないんだけどさ、あれって結局は20年前に作るべきだった映画を、ようやく今になって作っただけの話じゃないですか。新作なのに古臭いんだよね。『世界中がアイ・ラヴ・ユー』は使っている曲も20年代や30年代の古い流行歌ばかりだし、ミュージカル場面の演出も古いミュージカル映画のスタイルを踏襲したものばかり。でもちっとも古くない。紛れもなく今でなきゃ作れない、現代の映画になっているんです。

 開巻劈頭、エドワード・ノートンの歌う「Just You, Just Me」で一気にミュージカルの世界に観客を引っ張り込みます。ここで駄目だった人はミュージカルを体質的に受け付けない人ですから、早々に劇場を出ちゃった方がいいでしょう。宝石店で歌われる「My Baby Just Cares for Me」も最高に幸せになれるナンバー。エディ・キャンターやエノケンが歌った古い流行歌ですが、ニナ・シモンの歌で覚えている人もいるかもしれません。病院で医者や看護婦や患者たちが歌い踊る「Makin' Whoopee」は、『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』でミシェル・ファイファーが歌ってました。でも一番素敵だったのは、ハロウィンで子供たちが歌う「Chiquita Banana」だったりして!


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