17
セブンティーン

1997/07/08 松竹第1試写室
『氷の微笑』の脚本家ジョー・エスターハスの自伝的な映画。
ブラッド・レンフロとケビン・ベーコンが好演。by K. Hattori



 1960年代のオハイオ州クリーブランドを舞台にした青春ドラマ。ブラッド・レンフロ演ずる主人公カーチィは17歳のハンガリー移民。幼い頃に祖国を離れアメリカに渡ってきた彼は、父親と違って日常生活の中で言葉に不自由することはないが、いまだに「THE」を「DA」と発音してしまうことがコンプレックスになっている。昼間は学校、夜はマーケットでアルバイト。バイト先の同僚である年上の女性に思慕を募らせるカーチィは、彼女の前に出るとちょっと気持ちの上で背伸びしてしまう。アメリカ社会に早くなじみたいという気持ちと、思春期特有の反発心の間で揺れ動く主人公の様子をレンフロが好演。『スリーパーズ』もよかったけど、この作品で彼はまたひとまわり成長したような気がします。

 脚本は『氷の微笑』『ショーガール』のジョー・エスターハス。6歳の時にハンガリーからアメリカに移住し、クリーブランドで暮らしていた彼の、自伝的な要素が色濃く反映された作品らしい。『氷の微笑』で売れっ子になった彼は、センセーショナルな素材を扱う脚本家というイメージが付きまとうけれど、『ショーガール』を観た時、僕は「これは古典的なサクセスストーリーを目指した脚本に違いない」と感じた。今回『17/セブンティーン』を観ると、これが本当に古典的な青春ドラマのパターンを踏襲していて、エスターハスという脚本家の本質がどのへんにあるのかを再確認できました。

 主人公が憧れるラジオのDJ、ビリー・マジックに扮しているのは、『スリーパーズ』でもレンフロと共演しているケビン・ベーコン。『スリーパーズ』ではレンフロをレイプする残虐な看守役でしたが、今回はレンフロの兄貴分といった役どころです。この180度の転身ぶりにはびっくり。僕は映画の中でカーチィとビリーのツーショットになるたびに、「いつベーコンがレンフロに襲いかかるのだろう」とドキドキしてしまいました。もちろん、今回はそういう映画ではないのですけど……。

 ベーコンの役はDJの身分をかさに着て、レコード会社から不正な賄賂を受け取る一種の汚れ役。この賄賂はラジオ局の幹部も承知のことらしく、映画の冒頭で、ラジオ局の幹部自ら「分け前をよこせ」と言ってます。要するにこの手のことは、当時のラジオ局ではどこでも多かれ少なかれ行われていたのでしょう。(もちろん、今だって同じでしょうね。)ビリーという男は清廉潔白な聖人君子ではないけれど、取り立てて非難されるような悪党でもない。ごくごくありふれた俗っぽい男です。主人公カーチィは自分の思い描いていたビリー像が否定されたことで、彼に裏切られたように感じて深く傷つく。でもそこを乗り越えて、彼は大きく成長するのです。

 アメリカという国は「移民の子孫たち」が作った国であると同時に、今もなお、多くの移民たちを受け入れている国なのですね。それがアメリカ社会の活力源になっている。そんな移民たちの矜持を、ジョー・エスターハスという脚本家は描きたかったのかもしれません。


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