ポストマン・ブルース

1997/07/08 日活試写室
郵便配達の青年が、ヤクザと殺し屋の3人で機動隊に突入。
『弾丸ランナー』のサブ監督第2作目。by K. Hattori



 デビュー作『弾丸ランナー』で映画ファンをびっくりさせた、期待の新人監督サブが放つ待望の第2作目。出演は堤真一、大杉漣、堀部圭亮、遠山景織子。遠山以外は全員『弾丸ランナー』にも出演していた人ばかり。『弾丸ランナー』で堤真一と一緒に走っていたDIAMOND☆YUKAIが殺し屋、田口トモロヲがプロファイリング博士という小さな役で出演。清水宏演ずる刑事部長の勘違いぶりなどは、そのまま前作を踏襲。予告編を観ると、顔ぶれがほとんど『弾丸ランナー』と同じで笑ってしまったほどだが、他にも麿赤児や平泉成が出演するなど、配役面はぐっとゴージャスになっている。

 配達の途中にたまたま学生時代のクラスメイトに再会したことから、犯罪への関与者として警察にマークされることになった堤真一扮する郵便屋。彼はこの映画の中で最も個性の見えない男だが、彼を中心にすべての物語は動いて行く。彼が出会うベテランの殺し屋や、彼を付け狙う刑事たちの面白さ。中でも大杉漣扮する殺し屋ジョーの告白は面白すぎる。殺し屋コンテストの場面で、映画ファンは笑うぜ。どうせならカメラワークなども、きちんとパロディにしてほしかったけど……。この殺し屋が魚屋の自転車で街を突っ走る場面も、しばらくは脳裏にこびりついて離れそうにない。

 警察が郵便屋を犯人と決めつけて行く過程などは、神戸の事件でマスコミが大騒ぎをしていた直後だけに、まるで世評のパロディのようにも見えた。田口トモロヲ演ずるプロファイラーの登場に至っては、これが神戸事件報道のパロディだとしたら、これほど痛烈なエピソードはないだろう。ただし警察はこれほど馬鹿じゃない。刑事の妄想が際限なくエスカレートして行くためには、何か合理的な説明が必要だったようにも思える。

 これは主人公の行動にも言えることだ。彼が自宅で郵便鞄の中の手紙類を次々開封してしまったことが事件の発端といえば発端なのだが、郵便屋が預かっている手紙を開封してしまうなどというのはかなりの大事件。彼がいくら郵便屋という職業に倦んでいたとしても、そこに至らせる間に、映画を観る観客の誰しもが納得できる理由が欲しかった。こうした点で、この映画はちょっと強引すぎる。強引と言えば、警察が主人公の部屋を礼状なしで調べてしまうのも納得できないし、ここで得られた数枚のポラロイド写真から主人公を指名手配して公開捜査してしまうのも強引すぎる。

 映画の持つファンタジーだと言ってしまえばそれまでなのですが、「映画だから」で笑って済まされることと済まされないことがあるのです。この映画で言えば、主人公が遠山景織子扮する小夜子の居所を捜して1日中病院巡りをしたり、彼女とデートしている間、仕事はどうしているのかといったことは「済まされること」だし、最後に機動隊が道路封鎖して狙撃隊が待機しているのも「済まされること」だと思う。でもその前に「済まされないこと」が多すぎて、最後は納得できなかった。


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