ベスト・フレンズ・ウェディング

1997/07/25 ヤマハホール(試写会)
別れた恋人を婚約者から取り戻すために、策略謀略を巡らせる主人公。
ジュリア・ロバーツ主演のスクリューボール・コメディ。by K. Hattori



 ジュリア・ロバーツ主演のスクリューボール・コメディ。婚約した昔の恋人を奪い返そうと奮戦する主人公を、楽しそうに演じています。『プリティ・ウーマン』で大ヒットを飛ばしたものの、その後私生活のトラブルなどもあって低迷を続けていたロバーツですが、この映画では彼女が本領を発揮して完全復帰を印象づけました。恐る恐る映画に復帰し、周囲のスタッフや出演者の気遣いが感じられた『ペリカン文書』や『アイ・ラブ・トラブル』の痛々しさや、『ジキル&ハイド』『マイケル・コリンズ』などで見せていた周囲に遠慮した雰囲気も消えて、じつに伸び伸びと役を演じています。

 最初の10分ほどで物語のお膳立てをすべて整え、あとは猛スピードでラストまで突っ走る物語。主人公の動機が弱いとか、少々虫がいいとか、図々しいとか、そんな疑問を積み残したまま、あれよあれよという間に上映時間の1時間44分は過ぎてしまう。主人公の一途な行動はいささか常軌を逸脱していますが、そこを演じている俳優の魅力でカバーしながら強引に乗り越えて行くのがミソでしょう。実際にこんな人がいたら迷惑千万な話なんですが、ジュリア・ロバーツがやると許せてしまう。

 僕はこの映画を観て、スクリューボール・コメディの大御所プレストン・スタージェスの傑作『レディ・イヴ』を思い出しました。ロマンティックな場面の背後で馬鹿なことやらせているあたりから、『レディ・イヴ』で馬がヘンリー・フォンダの顔をなめる場面を連想したのです。ロバーツが仮縫い中のマルロニーの服から袖を引きちぎるとか、後ろでルパート・エヴェレットがマネキンと格闘するなど、他にも同じような「はぐらかし場面」が何ヶ所かにありました。

 この映画で一番面白かったのは、何といってもレストランで全員がディオンヌ・ワーウィックの「小さな願い」を合唱する場面です。たったひとりが歌いはじめたところから、だんだん歌声が広がって、最後は店内の全員が大合唱。テンポとタイミングが合わないと、ミュージカル映画でも、なかなかこう気持ちよくは決まりません。この監督はこの手の場面がうまいようで、この前にもキャメロン・ディアスがカラオケ屋で音痴な歌を披露して周囲の客の大歓声に迎えられる場面を作ってますし、最後に野球場の女子トイレでロバーツとディアスが対決する場面でも、周囲の女性たちを参加させてます。

 ルパート・エヴェレットが演じた編集者が、自分とロバーツの仲を「ドリス・デイとロック・ハドソンのようなカップル」と周囲に紹介する場面で僕は笑ってしまったのですが、他には受けてなかった。ドリス・デイは有名なレズビアンのアイドルだし、ロック・ハドソンはエイズで死んだ同性愛者。エヴェレット扮する編集者自身がゲイという設定でしたから、ここは映画ファンなら笑わなきゃいけない場面だと思ったんだけどなぁ……。

 エンディングはとっても素敵なハッピーエンドを迎えて、最後の最後まで楽しませてくれます。満足満足。


ホームページ
ホームページへ