ファーザーズ・デイ

1997/08/13 ワーナー試写室
ロビン・ウィリアムズとビリー・クリスタル共演のコメディ映画。
アイバン・ライトマンの演出も今回は不発。by K. Hattori



 アイバン・ライトマンの監督作にしては、レベルの低いコメディ映画なのが残念。快作『デーヴ』再びとは言わないが、せめて『キンダーガートン・コップ』程度にはならなかったものだろうか。主演はロビン・ウィリアムズとビリー・クリスタル。共演はナスターシャ・キンスキー。これだけの役者がそろって、このデキは解せないぞ。製作にはジョエル・シルバーの名前も見えるから、お金がないわけではないし……。

 18年前に付き合っていたガールフレンドが突然連絡してきて、「息子が家出したので探してほしい。夫には内緒だけど、じつはあなたの子供なのよ」と告白する。気になった男が17歳の「息子」の写真を手に行方を捜しはじめると、そこでもうひとりの「父親」と合流して……、という物語。突然の息子の登場に驚くにわか父親役に、ウィリアムズとクリスタルが扮し、昔のガールフレンド役にキンスキー。ロックバンドの追っかけをしている息子は難なく見つかるが、父親ふたりは彼がどちらの息子かで大揉めに揉める。はたして父親は誰か。

 そもそも脚本が中途半端で、テーマが絞り切れていないような気がします。ウィリアムズとクリスタルという、共にスタンダップコメディからスタートした人気俳優の共演がねらいなら、ふたりの芸をもっと前面に出してたっぷり笑わせなきゃだめ。映画の中でふたりの掛け合いが面白かったのは、ロックバンドを前にウィリアムズがデタラメなドイツ語を披露し、クリスタルがそれを通訳する場面ぐらい。ハイティーンの息子と両親世代のジェネレーションギャップをテーマにしたいなら、父親たちに自分たちの青春を「言葉」だけで説明させるのは弱い。もう幾つか、エピソードを積み増してほしい。

 そもそも息子は「母親が同時期に3人の男性と肉体関係を持っており、自分の本当の父親が誰だかわからない」という事態に、何の感慨も持たないのであろうか。この息子君は付き合っているガールフレンドに首ったけで、他の一切が眼中にないという純情ボーイ。彼は自分の母親の行状を嫌悪しないのだろうか。

 「あなたは父親よ」と打ち明けられた男たちも、なんで父親になったことを単純に喜べるのだろう。昔少し付き合って、突然目の前から姿を消したガールフレンドに対し、なんのわだかまりもしこりも感じないのかな。昔日の面影がまったくない、変わり果てたおばさんが訪ねてくるんじゃなくて、相手は今も十分に美しいナスターシャ・キンスキーですよ。自らの青春時代を回顧して、ちょっと胸が痛んだりしないのだろうか。そもそも、キンスキーがふたりの男に突然連絡するという理由が、僕にはちょっと納得できなかったぞ。

 日常生活の中に突如巻き起こった騒動を通して、登場人物が少しずつ成長して行くという映画の黄金律に沿った物語を目指したんだろうけど、ふたりの「父親」は何がきっかけでどう成長したんでしょう。僕にはそのあたりが、どうしても見えてこなかったのです。


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