世界中がアイ・ラヴ・ユー

1997/10/18 シネスイッチ銀座
さすがに同じ映画を3回も観ると飽きるか? とんでもない!
何度観ても新しい楽しさに出会える傑作。by K. Hattori



 同じ映画を3度も観るなんて、僕にしてはすごく珍しいことなんですが、この映画にはそれだけの価値と面白さがあります。観るたびに違う面白さに気がつくような気がするし、素敵なミュージカルナンバーが何度も観られるのはそれだけで嬉しい。これはいずれLDが出たら買ってしまいそうだなぁ……。今回は初日のオフも兼ねて、ミュージカル好きの友人たちと改めて映画が観られたのも楽しかった。一般の観客がウディ・アレンの新作ミュージカルをどう観たかという、生の感触も伝わってきましたしね。賛否はともかくとして、受けるべき個所でちゃんと場内に笑いが起っていましたから、まずはひと安心。初日にしては客席にアキが目立ったのが気になりましたが、恵比寿ガーデンシネマの方はどうだったんでしょ。ウディ・アレンの映画は日本でヒットしないと言いますから、こんなもんで普通なのかな。

 試写で観たときと内容的に違いはないんですが、字幕が一部変更になったみたいです。病院で医者や看護婦、患者たちが歌い踊る「メイキン・ウーピー」のシーンで、試写の時は確か「結婚はセックスのため」と訳してあったような気がするんですが、劇場では「子作り」「メイクラブ」「ベッドイン」と婉曲な表現になってました。確かに「セックス」じゃ身もふたもないけど、この直截な表現も良かったと思うけどなぁ……。この分だと他にも変更がありそうだけど、ちょっと気付かなかった。

 3回目ともなると物語の詳細までしっかり頭に入っているため、自然と感心の対象は芝居や撮影や音楽などの細部になってくる。自分の好きな場面が来る前に、「見逃すまいぞ」と身構えるようにもなる。今回も宝石店ハリー・ウィンストンでの「マイ・ベイビー・ジャスト・ケアズ・フォー・ミー」や、ハロウィンで狼男が歌う「ワッツ・ア・ムーンライト・キャン・ドゥ」、中国人の少女たちが歌う「チャイナタウン・マイ・チャイナタウン」、バナナが歌う「チキータ・バナナ」などにウットリ。最後にウディ・アレンとゴールディ・ホーンがデュエットする「アイム・スルー・ウィズ・ラブ」には改めて感心してしまった。なぜかしみじみと泣けるのです。

 パーティーでグルーチョ・マルクスに扮したダンサーたちが踊る「スポールディング隊長万歳!」は、十数人のダンサーの動きをカットを割らずに長回しで撮影している。カメラの動きはごく控えめで、ダンサーたちの動きを決して邪魔しません。このナンバーは序盤の「メイキン・ウーピー」同様、この映画の中では数少ないプロのダンサーたちの見せ場になってます。

 ティム・ロス演ずるフェリーというチンピラギャングの登場シーンは、何度観ても大笑いできます。散々悪態をついて悪ぶったあげく、ドリュー・バリモアを口説くときはおずおずと甘く細い声で歌い始めるあたりもおかしい。そもそもハリウッド一番の不良娘ドリュー・バリモアが、弁護士のお嬢様をやっているのがおかしいんですけどね……。でも可愛く撮れてます。


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