ジャングル・ジョージ

1997/12/02 ブエナ・ビスタ試写室
ジャングルの野生児ジャングル・ジョージが大活躍するコメディ映画。
映画ファンなら大笑いできることを保証します。by K. Hattori



 来年のゴールデンウィークに公開する映画なのに、なぜ今この時期に試写が回っているのかというと、主演のブレンダン・フレイザーの来日スケジュールの関係なんです。僕は来日記者会見には行かなかったんですが、いい機会だから試写だけ観てきちゃいました。

 原作は60年代に誕生したテレビ番組のヒーロー「ジョージ・オブ・ザ・ジャングル」だそうです。これって日本でも放送されてたんですかね。僕はぜんぜん知りませんが……。内容はターザンの青年版みたいなものです。ジャングルに墜落した飛行機から投げ出された赤ん坊が、動物たちに見守られながら成長して、やがてジャングルの王になる。それが「ジャングル・ジョージ」というわけです。これは、現在ハリウッドでひとつのジャンルになっていると言っても過言ではない「テレビ番組リメイク物」のひとつなのでしょう。でも、原作を知らなくても十分に楽しめますよ。僕は試写室の中で大笑いしちゃいました。全編が映画のパロディになっていて、映画ファンなら必ず楽しく観られるはずです。

 映画のパロディと言っても、これは特定の映画の特定の場面を引用変形するものではありません。ここで茶化されているのは、映画にしばしば登場する紋切り型の表現です。例えば「ヒロインには婚約者がいる」「婚約者は金持ち」「金持ちは性格が悪い」「ヒロインが出会う野生的な男」「ヒロインは恋に落ちる」「婚約者は嫉妬に狂う」「最後はハッピーエンド」という展開を、徹底的に茶化して茶化して茶化しまくる。(この展開って『タイタニック』と同じだな。)紋切り型の表現をまず出しておいて、そこから派生する観客の思い込みや予断を、映画が猛スピードで追い抜いて行く面白さ。

 例を出しましょう。映画の中にハンサムな金持ち青年が登場すれば、観客は「どうせこいつは性格が悪いんだろうな」と予測する。この映画はそんな観客の期待をまったく裏切ることなく、いかにも性格がひん曲がった金持ちの嫌な野郎を提示します。その様子は「おい、そこまでするか!」と観客があきれ返るほどなのです。

 観客の期待を映画が追い抜き、それを知った観客がさらに先を予想すると、それすらも映画が楽々と追い抜いて行く。この進路予想のスピードレースに、映画は常に勝ち続けるのだからすごい。当然、映画はどんどん話しのテンポを上げて、最後は猛スピードで疾走するようになります。そんなスピーディーな展開でも物語が脱線しないのは、映画の筋立てそのものが、紋切り型のパターンにはまり込んでいるからです。紋切り型万歳です。

 最初から最後まで、クスクス、ウフウフ、ゲラゲラ笑える映画です。しかも徹底的に健康的な娯楽作。最後の最後までサービス満点で、ラストのギャグには、ほぼ満員の試写室が一瞬グラリと揺れるような笑いが起きてました。さすがディズニー。子供からお年寄りまで、誰にでもオススメできるファミリー映画です。こういう映画は、ぜひとも日本語吹き替え版を作っていただきたい。


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