トゥモロー・ネバー・ダイ

1998/01/21 日比谷映画
(完成披露試写会)
第三次世界大戦をもくろむメディア王の陰謀にジェームズ・ボンドが挑む。
ピアーズ・ブロスナン主演の007シリーズ最新作。by K. Hattori



 ピアーズ・ブロスナン主演の007シリーズ最新作。前作『ゴールデンアイ』も良かったけど、今回はそれよりもっと面白かった。今回の映画では、ミシェル・ヨー(ミシェル・キング)扮する中国の情報部員が、ボンドの相棒として大活躍する。これが楽しい。いつもの、守ってもらうことに何の疑いも持たない、奇麗なだけのボンドガールとは中身が違うのです。逆にボンドの昔の恋人だったテリー・ハッチャーは、誰かの庇護なしにはなしには生きていけない女だったがゆえに命を落す。やっぱり女は自立してなきゃ駄目ですね。

 最初から最後までノンストップで展開するアクションは前作どおり。007シリーズの良さは、どんなに荒唐無稽なアクションを展開しても、それが物語のリアリティを壊さないことです。また、どんなに荒唐無稽なメカが登場しても、誰もそれに異論をはさまない。ここではどんな無茶苦茶も許される。どんなデタラメもまかり通る。それだけに、ちょっとやそっとのアクションシーンでは観客が納得しない。しかも観客は、主人公が絶対に死なないことをあらかじめ知っている。生死の瀬戸際にいても、涼しい顔をしているのがボンドですしね……。そんな状況の中で、観客の期待を常に上回る、古風で斬新なアイデアとアクションが求められるのです。

 今回の敵は、世界の新聞・テレビ・通信を牛耳るメディア王、エリオット・カーヴァー。彼はGPSシステムとステルス艦を使って、イギリスと中国に紛争を起こし、それを自社で独占的に報道することで巨万の富を得ようとしている。戦争こそ、彼にとってもっとも美味しいビジネスなのです。彼のたくらみに気づいた英中両国の情報部は、カーヴァーのもとにスパイを送り込んで、彼の野望を粉砕する。話としては、そんなところです。

 今回の映画も全編見どころだらけなんですが、一番感心したのは、手錠でつながれたボンドと中国の女スパイが、1台のバイクに乗って逃走するところ。追いかける方は自動車とヘリで追跡してくる。逃げるふたりが左右別々の手でハンドルを握り、1台のバイクをふたりで運転するというアイデアが面白い。こういうアクションシーンは、言葉で説明してもしょうがない。ぜひ自分の目でご覧になってみてください。

 今回の作品で最大の収穫は、ミシェル・キング改めミシェル・ヨーの世界デビューでしょう。若手中心の香港映画界では、すでにオバサンの部類に入るひとですが、欧米ならまだまだいけるぞ。アクションでこれだけ身体が動く女優は珍しいので、今後の活躍が期待されます。同じアジア系として、個人的にも応援したい。今回嬉しかったのは、彼女が欧米の映画にありがちな「アジア系メイク」になっていなかったこと。前半のパーティー場面などは少し化粧してますが、後半のアクションシーンではスッピンに近いです。それでも十分に奇麗なんだよね。先日観た『スタントウーマン/夢の破片(かけら)』はイマイチでしたが、今回はそれを挽回しました。

(原題:Tommorrow Never Dies)



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