ビーン

1998/02/03 パンテオン
(完成披露試写)
ビデオで大人気の「ミスター・ビーン」がついに映画化!
この日は舞台挨拶もあって大騒ぎ。by K. Hattori



 テレビやビデオで世界的なブームを呼んでいる「ミスター・ビーン」が、映画化されてついに日本上陸。この日の試写は、主演のローワン・アトキンソンが舞台挨拶をするとあって、劇場の内外にテレビカメラがずらりと並び、さながら門前市をなす勢い。加えて、マスコミ以外の一般観客も入った完成披露試写だったため、舞台に現われる“ミスター・ビーン”ことローワン・アトキンソンを待ちこがれた人々は、劇場内の照明が落されただけで大喜び。舞台上にいよいよ「彼」が登場したときは、それだけで拍手喝采が起きてました。アトキンソンもまた完全に“ビーン”になりきってまして、舞台の上に作られた特性演台の上で「ど〜も、ビーンです……」と言うまでがひと騒動。その後も、ごにょごにょと体を動かしていましたが、突然ポケットから何か取り出して「オニはそと……、フクは〜うち」と豆まきを始めたときには、ドッと受けてました。サービス精神旺盛な人です。

 肝心の映画の方ですが、残念ながら舞台挨拶ほどには面白くなかったというのが本音。基本的に“ビーン”の面白さは、アトキンソンの個人技だから、周辺人物とのアンサンブルにしようとしても無理がある。また、時に残酷にさえ見えるギャグの数々は、作られているのがイギリスだから許されるもので、アメリカのホームドラマにはそぐわないものだと思う。今回ビーンの訪問を受けるのは、アメリカの美術館で学芸員として働く真面目な男とその家族。僕は彼らが気の毒で気の毒でしょうがない。だって、あんまり残酷すぎるんだもんね。映画版『ビーン』の監督は『彼女がステキな理由〈ワケ〉』のメル・スミス。脚本は『フォー・ウェディング』のリチャード・カーチスと、「サタデー・ナイト・ライブ」にも参加していたロビン・ドリスコール。

 観るとすぐわかることだけど、この映画の中ではビーンがひとりで登場しているシーンは猛烈に面白いのに、誰かと掛け合いで何かする場面はつまらないのです。思うに、ビーンが見せる馬鹿げた仕種やふるまいが、他人と関わることで嘘っぽく見えてしまうんじゃないでしょうか。ビーンひとりだと、どんなことでも可能なのに、他人と関わることでその可能性を狭めているような気がします。パントマイムが得意なビーンも、他人がそばにいれば話さなければならなくなってしまうし……。(今回のビーンは、美術館でショート・スピーチまで披露します。それなりに感動的なんですけど、ビーンにしてはしゃべり過ぎという気がしないでもない。)

 シーンによっては目茶苦茶に面白いところもあるのですが、背景に陳腐なホームドラマを置いたため、物語がいまひとつ高揚して行かない。やはりビーンは、イギリスで活躍するのが似合うと思う。もし次回作を作るなら、今回ほど予算をかけずとも、イギリスでこじんまりと、それでいてパンチのある作品を撮ってほしい。せっかくビーンという素材があるのだから、生っ粋のイギリス製コメディを見せてほしいものです。

(原題:BEAN)



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