革命の子供たち

1998/02/06 TCC試写室
スターリンの子供を身ごもったオーストラリアの女性共産党員の運命。
政治パロディとして最高に面白い映画。笑った。by K. Hattori



 だいぶ前になるけど、テレビで「アメリカ共産党」のドキュメンタリー(ニュース番組の特集程度だと思う)をやっているのを見て、「共産主義国以外にも、共産主義者っているんだな」と改めて思ったものです。もちろん日本にも筋金入りの共産主義者はいるんでしょうけど、日本共産党は世界の共産主義の本流からはちょっと離れたところにあると思いますので、あまり身近に「共産主義者」を感じることはありません。

 この映画の主人公ジョーンは、オーストラリアで共産主義革命を目指して闘争を続け、部屋の壁にはマルクスやレーニンの写真がぺたぺた貼ってあるような、熱狂的共産主義者です。時代は1950年代初頭。ジョーンはソ連の指導者スターリンをアイドル視し、自国の惨状と自らの闘争過程を手紙に綴ってはスターリン宛に送っています。その文面は、活動報告というよりファンレター、ファンレターというよりラブレターに近いもの。手紙を読んで感激したスターリンは、党大会の賓客として、ジョーンをモスクワに招待します。憧れのアイドルに出会えて、ジョーンは舞い上がりっぱなし。ついにはスターリンとベッドインして、高血圧気味の彼を腹上死させてしまう。傷心の彼女はオーストラリアに戻りますが、そのお腹には、しっかりスターリンの子供が宿っていたのです。彼女は偉大な血を引く我が子に、共産主義の英才教育を施すことにするのですが……、というお話。

 全体の作りは、いわゆる「フェイク・ドキュメンタリー」になってます。年老いた関係者がカメラの前でインタビューに答え、ジョーンとその息子の生涯を語って行くという構成。古ぼけたモノクロ写真、当時の記録フィルムなどを巧みに織り込み、俳優たちも青年役から(偽の)インタビュー時点の老けメイクまで自由自在。主人公ジョーンを演じるのは、『目撃』で大統領補佐官を演じたジュディ・デイビス。その夫に『シャイン』でアカデミー主演男優賞を受賞したジェフリー・ラッシュ。ジョーンを密かに愛するスパイに、『ピアノ・レッスン』のサム・ニール。スターリン役にはF・マーリー・エイブラハム。ジョーンの息子ジョーに扮したリチャード・ロクスバーグは見慣れない顔ですが、オーストラリアでは数々の賞も受けている俳優。その恋人役として、『ベスト・フレンズ・ウェディング』にも出演していたレイチェル・グリフィスが出演しています。外国人であるスターリンを演じたエイブラハム以外は、全員オーストラリアやニュージーランド出身の俳優たちです。

 とにかく全編クスクス笑いが絶えない映画でした。スターリンや側近たちを、徹底的に戯画化しているのがおかしい。スターリンが側近たちとコール・ポーターを歌う場面はおかしかったし、密告や粛清など、本来ならシリアスになりそうなものも、完全にギャグにしてしまっている。終盤でちょっと物語が大きくなりすぎたような気もしますが、前半から中盤までが面白すぎるので、ちょうどいいバランスかもしれません。

(原題:Childre of the Revolution)



ホームページ
ホームページへ