マウス・ハント

1998/02/10 UIP試写室
ドリームワークス第3弾はネズミが主演の『ホーム・アローン』。
優れたギャグの連発で大いに笑えます。by K. Hattori



 スピルバーグ率いるドリームワークスが、『ピースメーカー』『アミスタッド』に続いて放つ第3作目は、古い屋敷に居座るネズミが大活躍するコメディ映画。ノリとしては、ネズミが主人公の『ホーム・アローン』だと思えば間違いない。親の遺産で古い屋敷を相続した兄弟は、そろって一文無し。ところがただのあばら屋だと思っていたボロ屋敷が、じつは19世紀の有名な建築家の作品で、アメリカの国宝とも言うべき、莫大な財産価値のあるものと知って目の色が変わる。これは歴史的な大発見。あちこちの穴やほころびを修繕してオークションにかければ、1千万ドルを優に超える大金が転がり込む。だがそこにはひとつ問題があった、無人と思われた屋敷には、1匹のネズミが住みついていたのだ。

 たかだか1匹のネズミぐらい、放っておけばいいようなものですが、兄弟が徐々にネズミに対して感情的になり、激昂し、我を忘れて追い掛け回す様子が、なかなか上手に描かれています。ところが相手のネズミがなかなか賢くて、兄弟の奮闘も空回り。この物語の主人公とも言うべきネズミは、『ベイブ』でアカデミー賞を受賞したチャールズ・ギブソンが、『ジュラシック・パーク』のスタン・ウィンストンが作ったアニマトロニクスや、CGなどを利用しながら作り上げたもの。また多くの場面で、実際のネズミたちが多彩な芸を披露しています。サーカスさながらのアクロバットなども、実際のネズミを使って撮影していることが多いそうですが、アニマトロニクスやCGが精巧すぎて、どれが本物でどれが偽物だかわからない。特殊効果担当者や動物トレーナーにとっては、喜ばしいことなのか悲しいことなのか……。技術がここまで来てしまうと、もうどこが特撮かと見分ける努力を捨てて、ひたすら物語に没入するしかない!

 僕は『ホーム・アローン』シリーズ(PART3は未見)があまり好きではないのですが、この『マウス・ハント』は大いに気に入りました。ネズミを追い出そうとする兄弟たちが、騒動の中でいさかいや和解を繰り返し、少しずつ成長して行く様子は観ていて好ましいものです。定石通りと言えばそれまでですが、その定石をきちんと型にはめるのは案外難しい。でもこの映画では、そのあたりがじつにマトモに仕上がっている。

 散りばめられたギャグの数々も、残酷さとバカバカしさと意地悪を混ぜ合わせ、毒で毒を制しながら無害なマンガに仕上げている。これは見事です。映画の冒頭の葬式シーンから大笑い。バスダブや史上最強の猫にも大いに笑わせてもらった。そしてクリストファー・ウォーケン演ずる「殺し屋」の登場で、笑いはピークに達する。この映画ではギャグをどんどんエスカレートさせて、「もう勘弁」という直前で別のオチにするりとかわす、そのタイミングが絶妙なのです。いや〜笑った。

 セットや衣装などが、40年代から50年代風のノスタルジックなデザイン。撮影の色調も落ち着いていて品があります。これなら大人の鑑賞にもたえるでしょう。

(原題:Mouse Hunt)



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