ソウル・フード

1998/02/24 20世紀FOX試写室
黒人大家族の世代交代を描くホームドラマの佳作。
派手さはないけど上手い。by K. Hattori



 「ソウル・フード」というのは、黒人家庭で作られる伝統的な南部料理のこと。料理の味は祖母から母親へ、母親からその娘へと受け継がれて行く。家族から“ビッグママ”と呼ばれている母親には3人の娘たちがおり、それぞれに結婚して家庭を持っている。長女のテリーは夫のテリーと共に弁護士として活躍中。次女のマキシーンは3人の子供たちの母親。美容院を経営する三女バードは、前科のある夫レムと新婚ホヤホヤ。ビッグママは夫の亡き後、ひとりで子供たちを育ててきた肝ったま母さん。毎週日曜日には家族全員で「サンデー・ディナー」の食卓を囲むのが、家族のルールになっている。そこで出される料理の数々が、タイトルにもなっている「ソウル・フード」というわけです。

 映画宣伝的にはヴァネッサ・L・ウィリアムズの名前が大きく扱われてますが、彼女は映画の中では脇役。映画の中心にいるのは、ビッグママの孫であるアマッド。演じているブランドン・ハモンドは、『マーズ・アタック!』『ザ・ファン』『SPACE JAM』などに出演している売れっ子で、ひょっとしたらこの映画の中では一番映画ファンに馴染みのある顔かもしれません。個人的には、『クロッカーズ』で主人公の少年を演じ、最近では『ハイスクール・ハイ』にも顔を出していたメーキー・ファイファーの方が気になりました。彼は三女の夫レムを演じているのですが、たぶん物語の3分の1ぐらいはファイファーが引っ張っていると思う。精悍な顔立ちは僕の好きなタイプなんですが、黒人の若手俳優がハリウッドで伸し上がって行くのは大変だからなぁ……。

 内容的には堅実なホームドラマだということが予告編時点でわかっていたので、僕の感覚からすると「配給はフォックスの子会社であるフォックス・サーチライトでもいいんじゃないの?」という気もしました。同じように堅実なホームドラマを連発しているエドワード・バーンズ(『マクマレン兄弟』『彼女は最高』)は、サーチライトの配給ですからね。ところが『ソウル・フード』は20世紀フォックス本体の配給です。多分この映画に登場する黒人俳優たちって、日本にはぜんぜん馴染みがないけど、本国ではそれなりの認知度があるスターばかりだってことなんでしょうね。

 黒人映画というと、出世頭スパイク・リーを筆頭に、黒人社会が抱えているネガティブな側面を描くものが多いような気がする。アメリカでそうした映画が多く作られているのも事実でしょうが、日本に輸入される映画が、どうしてもそうした方面に偏っている側面もあるんじゃないだろうか。この『ソウル・フード』のような「普通の映画」は、公開されるとしても規模が小さくなってしまうんですよね。この映画は全体にほのぼのしたタッチで、観ていてハラハラドキドキするようなところもあまりないけど、人物描写やエピソードの構成はよく考えられてます。テーマも明確だし、演出は教科書通りって感じ。観ても失望はしない映画だと思います。

(原題:SOUL FOOD)



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