ウォレスとグルミット

1998/03/27 早稲田松竹
アカデミー賞アニメ部門の常連になっている人気シリーズ。
いつも困った顔のグルミットがかわいい。by K. Hattori



 ずっと観る機会のなかった『ウォレスとグルミット』シリーズを、早稲田松竹でまとめて全部観た。今回上映されたのは、「スレッジハンマー」「チビのレックス〜恐龍はなぜ絶滅したか〜」「チビのレックス〜夢〜」の3本の短編を集めた「アードマン・コレクション」と、『ウォレスとグルミット』から「快適な生活」「チーズ・ホリデー」「ペンギンに気をつけろ!」そして「ウォレスとグルミット、危機一髪!」の3本。ところで、動物園の動物たちにインタビューする「快適な生活」には、ウォレスもグルミットも登場しないんですが、なぜこれが『ウォレスとグルミット』シリーズ中の1本になっているんだろうか……。不思議だ。

 「スレッジハンマー」はミュージックビデオなので、他の作品とはちょっと毛色が違いますが、残りはすべて粘土細工を少しずつ動かしてコマ撮りしたクレイアニメーション。『ウォレスとグルミット』シリーズは、アカデミー賞のアニメーション部門賞を受賞した、世界的にも有名な作品です。監督はニック・パーク。《アードマン・アニメーションズ》というのは、彼の工房(会社)の名前。この手のクレイアニメは、欧米の作家の独壇場ですね。日本にもクレイアニメの作家は大勢いるようですが(NHKの教育テレビで、短編を放送していたりします。輸入物も多いですが……)、それで劇場用作品を作ろうという発想はないでしょう。

 クレイアニメの作家には、他にも『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『ジャイアント・ピーチ』のヘンリー・セレックがいる。『ピングー〜世界で一番元気なペンギン』のオットマー・グッドマンがいる。『ウォレスとグルミット』もそうですが、「粘土細工を少しずつ動かしてコマ撮り」というクレイアニメの理屈はわかっていても、「こんなもんどうやって作ったんだ?」と驚くような表現が次々と出てきてびっくり。実写なら3秒で撮影が終わってしまうような簡単な表現にも、じつに膨大な手間暇をかけている執念には、本当に感心してしまいます。デジタル技術全盛の映画界で、ここだけは完全にハンドメイドの世界。それが何ともいえない、作品の温かさや、懐かしさになっている。

 『ウォレスとグルミット』シリーズの中では、月で自動販売機(?)に追いかけられる「チーズ・ホリデー」と、狂暴な悪党ペンギンが登場する「ペンギンに気をつけろ!」がお気に入り。グルミットが羊泥棒に間違えられる「危機一髪!」も力作だと思うけど、盗んだ羊からドッグフードを作るという部分に、若干の血生臭さを感じてしまう。その点、同じように犯罪者が登場しても「ペンギンに気をつけろ!」はいい。悪党ペンギンが、博物館への侵入経路をあれこれと思案し、巻尺を使って高い窓にスルスルと登るあたりなんぞは、観ていて興奮しました。クライマックスの、模型列車を使った大チェイスも迫力満点。レールを次々つないでいくグルミットの表情が素晴らしいのです。

(原題:Wallace & Gromit)



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