スパイス・ザ・ムービー

1998/04/14 徳間ホール
イギリスのポップグループ、スパイス・ガールズの初主演映画。
昔のビートルズ映画みたいで超楽しい! by K. Hattori



 イギリスの人気ポップグループ、スパイス・ガールズの初主演映画。彼女たちは「スパイス・ガールズ」自身を演じ、仲間同士の友情、マネージャーとの軋轢、B級タブロイド紙の陰謀などをからめながら、テンポよく物語を進めて行く。映画のコンセプト……というか元ネタは、'60年代に大ヒットしたビートルズ主演映画『ビートルズがやってくる/ヤア!ヤア!ヤア!』と『HELP! 四人はアイドル』だと断言します。人気絶頂のアイドルグループを取材するテレビ局のカメラマンたちという設定は『ヤア!ヤア!ヤア!』だし、スパイスたちが移動に使うバスの内装は『HELP!』でビートルズのメンバーたちが住んでいた家と同じ雰囲気。アイドルの私生活を描くといっても、それを虚構と割り切って、徹底的に遊んでしまおうというユーモア感覚に大笑い。

 最近イギリス映画が日本でも注目されていますが、この『スパイス・ザ・ムービー』にある少しひねくれた笑いのセンスは、まさにイギリス映画の伝統そのもの。僕は先日公開された映画版『ビーン』より、『スパイス・ザ・ムービー』の方100倍ぐらい面白いと思うし、イギリスらしい空気感を感じさせる映画だと思う。映画ファンなら、スパイスたちがコンサートに使うロイヤル・アルバート・ホールを見て『ブラス!』を思い出すでしょう。無名時代に出入りしていた店が潰れているというペーソスは、マイク・リーの『キャリア・ガールズ』みたいです。007を引退したロジャー・ムーアが、スパイスたちのマネジメントをしているという設定もオモシロすぎるぞ。彼女たちが写真撮影の時にみせる'60年代風のファッションも、アメリカのシックスティーズではなくて、ちゃんとロンドンの'60年代になってます。中身はガキ向けのアイドル映画ではあるのですが、作っている大人たちがちゃんと「自分たちも楽しめるもの」を作ろうとしている。それがちゃんと結果になってます。

 製作総指揮がスパイスたちの実際のマネージャーだということもあって、彼女たちのキャラクターもじつに面白く描けていてよろしい。5人の性格がきっちりと描き分けられていて、僕は最初彼女たちをぜんぜん知らなかったのですが、最後は全員が好きになってしまった。映画の中ではそれぞれにちゃんと見せ場があって、不公平のないようになってます。コンサートやライブ、リハーサルの場面には見応えがあり、そこだけ抜き出せばコンサート・ビデオとして売れるぐらいのクオリティがあると思いました。客席に人をぎっしり詰め込んで、ステディカムやクレーンを使った撮影をしているのだから、これはすごく手間がかかってるんですけどね……。

 業界内幕コメディなので、テレビやパーティーの場面に有名人がぞろぞろカメオ出演しています。思わぬところに意外な大物俳優が登場するのも大笑い。ロジャー・ムーアもそうですが、判事役で登場したスティーブン・フライもおかしかった。ハリウッド映画への皮肉もきいていて、『スピード』真っ青のバスジャンプには爆笑!

(原題:SPICEWORLD)



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