ホーム・アローン3

1998/04/21 20世紀フォックス試写室
マコーレー・カルキンから主役を交代して作ったシリーズ最新作。
徹底してスパイ・コメディにすればよかったのに。by K. Hattori



 先日結婚したマコーレー・カルキン主演で大ヒットした、『ホーム・アローン』シリーズの最新作。今回は主演がカルキン君から、『素晴らしき日』でミシェル・ファイファーの息子を演じていたアレックス・D・リンツにバトンタッチしている。相変わらずクリスマス・シーズンの映画だけど、休暇旅行から子供がひとり取り残されるというパターンをやめて、昼間は人気の少ないベッドタウンで、水ぼうそうの子供が泥棒相手に大活躍する物語に変更。今回は相手もただの間抜けな泥棒ではなく、世界中を暗躍する闇の武器商人になっているのが新しい。ミサイル制御用のマイクロチップを盗み出した武器商人たちが、空港での手違いから主人公アレックスのもとに渡ったチップを奪還すべく、あの手この手で迫ります。製作・脚本はいつものようにジョン・ヒューズ。監督は編集マン出身のラジャ・ゴズネル。

 僕はこのシリーズを第1作目から全部観ていますが、いつも素直に笑えたためしがない。両親は主人公を邪険に扱い、兄や姉も意地悪ばかり。それでもいじけたりひねくれたりせずに、素直ないい子を通す主人公の健気な姿が嫌味に感じられてしまう。今回の映画では、近くの家に繰り返し侵入する犯罪グループを発見して警察に通報するたびに、「子供の悪質なイタズラ」とみなされ、警官からも母親からも兄姉からも問題児扱いされるのが気の毒過ぎる。物語の段取りとして、ここまで追い詰めておけば「警察は当てにならない。僕が家を守るんだ」という動機付けにはなるのは確かですが、もっと他にやりようがあるんじゃないかな。僕はあそこまで孤独な戦いを強いられてしまった主人公が哀れに思えるし、ましてや泥棒グループと戦っている最中に母親からかかってきた電話に「何も問題ないよ」と答える姿には、怒りさえ感じてしまった。彼は事がここに至っても、警察を呼ばず、母親にも助けを求めないのは、それまでの仕打ちのせいで、徹底した人間不信になっているからです。

 序盤にあったスパイ・コメディ風の演出を徹底させれば、この映画は定番シリーズに新風を吹き込む異色作になったと思う。用意周到な計画を練って、進入の痕跡を残さず立ち去る泥棒というアイデアは面白いし、通報されて危機一髪でどうやって逃げ出すかというスリルもある。さまざまなハイテク装備で1分の隙もなく練り上げられた犯行計画が、ひとりの子供の反撃であえなく破綻するのは面白いじゃないですか。この映画では前半で犯行グループの鮮やかな手並みを見せておきながら、いざ主人公のいる家に侵入しようとすると、いつもどおり力ずくで窓や玄関をこじ開けようとするのがつまらない。近年のスパイ映画の定番アイテムで、この映画には登場していないものがたくさんあります。例えば熱源センサー、音波探知機、赤外線スコープなど。こうしたハイテク装備を、主人公が創意工夫で突破して行く話を作ると、映画はぐっと面白みが増したと思います。続編もどうせできるでしょう。これは今後の課題です。

(原題:HOME ALONe3)



ホームページ
ホームページへ